「世界が日本人に期待していること」を理解する
土井は「真のグローバル人材になるには世界と対等に戦う必要がある。そのためには、自身の強みを把握し、『世界が日本人に期待すること』を理解しなければいけない」という。
こんまりが「最も影響力のある100人」に選ばれた際の写真を見て、土井は、「世界がこんまりに、もっといえば日本人に期待しているのは『職人』としてのイメージだ」と確信した。
同誌の公式写真では、近藤の手が強調されていた。それは、彼女の小柄な体から繰り出される「繊細で上質な手技」が象徴された写真だった。
Bobby Doherty—New York Magazine
日本に対して、「大国に負けず経済で成功した国」というイメージを持つ人も少なくないかもしれない。だがアメリカの視点では、あくまでも「経済大国はアメリカ」だ。世界的に見ると、日本は長い歴史を持ち、神秘的な精神性を持つ国、というイメージの方が遥かに強いのだ。「長い歴史や深い精神性を持つ国というアイデンティティで戦わないかぎり、日本は世界で絶対に勝てない」と土井はいう。
「ポストこんまり」はこう育つ
こんまりはいうまでもなく、過去類例がないほどに「世界へ大きく羽ばたいた日本人」だろう。英語を堪能に使いこなすわけではないが、様々な分野での海外セレブとの繋がりも持つ。「こんまりを知っている」ことは、米国ではすでに、ある種の常識や教養となっているといっていい。
では、ごく普通のOLだったこんまりを真のグローバル人材へと育て上げた土井の持つ、世界を舞台に戦える人を育てる「教育」の秘訣は何なのか。「ポストこんまり」的な人材はどう育てるのか。
ここで土井は、彼にとって高校の大先輩にあたる、日本人として国連の第一号職員になった明石康氏の言葉、「グローバル社会で大事なことは、異国の文化へのリスペクトだ」を引用した。
「いくら語学が堪能であっても、異国文化への敬意がなければグローバル人材にはなれない。そして、欧米の文化をリスペクトするためには、歴史について学ぶことが必須です。やはり、彼らの文化のルーツとなるものに触れる必要があるんです」とここでも土井は繰り返す。
親も、子供に外国の文化、外国語を勉強させる前に、自分自身の「他国へのリスペクト」を確認すべきだ、と土井は言う。自分の育った国以外の文化についての教養、それへの関心を持っているかが、子供への影響の鍵となるのだ、と。
「人間は、自分が大切にしている物を大切にしてくれる人を好きになります。だから、外国人と関わる時も、彼らの国の文化を知っているか、興味を持っているかが基本なんです」。彼らが何を大切にしているかを理解し、尊重することが重要なのだ。