「中長期的には強気」──市場関係者に聞く、バイデン氏勝利で「米経済」はこう変わる

Photo by Jonathan Newton/The Washington Post via Getty Images


一方、現段階で、上院ではいまだ共和党のほうが有利と言われている。すると、「ねじれ」が発生するので、財政投資の金額が小さくなってしまうかもしれない。すると金利上昇を抑えることになるので、株式市場にはポジティブだ。

物色対象は上院がどうなるかで決まる。いずれにせよ、中期的には強気だが、9日夜の米国市場での株価急騰で目先の好材料をすべて織り込んでしまっているので、26000円前後では利食いがでる可能性は示唆しておきたい。

──マーケット関係者にとって、バイデン氏とのコミュニケーションはどうなりそうか

トランプ氏はSNSを駆使して、マーケットをこれまで散々驚かしてきた。バイデン氏になれば、それがなくなる。つまり、マーケットは予測しやすくなるということだ。

また、バイデン氏は菅首相と似ていて、積み上げ方式。上院の長老として、積み上げの長老なので、事務方とか専門家に任せ、そこから出てきたことを粛々とやるように見える。だからこそ、今後、閣僚や専門委員会が出てくるが、そこの誰がトップになるかで方向性は変わってくるだろう。

そのほか、今後、注目すべきポイントとしては、新型コロナウイルスへの対応。バイデン氏は経済を犠牲にしてでもコロナを抑えていくのではと思われている。また、ワクチンの動きがどうなるかも確認していく必要がある。

──日本への影響で気になるところは

長期金利が現下の約0.9%を超え、トリプルウェーブによって金利が上がったら、企業への影響は大きい。投資がやりづらくなるからだ。まずは、成長株が下がりやすくなる。また、ベンチャーにも資金が回りにくくなる。だから、ねじれていた方がこの機運を妨げないので、上院は共和党の方がいいという見方も聞かれる。

米中関係も恐らく何も変わらないだろう。関税を今回トランプが引き上げた。これで、バイデンが引き下げたら弱腰だといわれるからだ。議会は米民主党・共和党ふくめても、中国に対しては強硬派である。

ただし、バイデン氏含め、民主党の方が実は、トランプ政権よりも、中国に融和的な動きを過去にはしていた。そういう意味においては、日本はこれから警戒する必要もありそうだ。

また、足元の為替を見ていても、一時103円台に入ったように、やはりアメリカのドルを安くして、そして輸出競争力の向上とともに、輸入で安いものが入ってこないようにさせる政策に見える。それはつまり、日本の輸出産業に関しては、景気が良ければいいが、厳しい側面があることも指摘したい。

──バイデン氏の当確で、日本企業にアドバイスがあるとしたら

企業経営者も、ベンチャー経営者も、バイデン氏になって、ブレーンや組閣次第ではあるものの、方向性はトランプ時代よりも見えやすくなるので、ひとつひとつ確認しながら、動いていけばいいのではないか。

文=谷本有香

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