バイデン氏の勝利宣言を受け、米経済、また市場はどう動くのか。ピクテ投信投資顧問のストラテジスト、 糸島孝俊氏に聞いた。
──まずは現段階での感想は
当初、郵便投票があるので決定までもつれるだろうとは想像していたが、マーケットの予想通りバイデン氏となった。ただ、思った以上にトランプ氏が票を伸ばし、接戦になった印象だ。
──バイデン氏の経済政策をどのように見ているか
バイデン氏の経済政策は、わかりやすいところでいえば税制だ。法人税率を現行の21%から28%にするという増税政策だ。それにくわえ、富裕層についても、資産取引課税を強化すると打ち出している。その増税分で、財政政策にお金を当てようとしている。
一方、トランプ氏を見てみると、トランプ減税ということで、法人税は21%のままキープするという見方だった。つまり、トランプ氏が勝てば、「増税は無い」、バイデン氏が勝てば、「増税」という構図だ。
──株式市場はバイデン氏の経済政策をどのように織り込んでいるのか
株式市場は、バイデン氏だと法人税増税の結果、一株あたり利益(EPS)が減るだろうと見ている。だから、「売り」につながるだろうという考え方が多かった。反対に、このロジックからトランプ政権下では株式市場は上がってきていた。
また、環境政策も違いが大きい。バイデン氏は2050年までの温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとしている。また、クリーンエネルギーの推進など、環境インフラ関連で、就任第一期の4年間に2兆ドル(約210兆円)の巨額投資をしてアメリカを復活させるという。
この巨額投資の金額が大きいので、増税分のマイナスを打ち消し、景気が上向く効果の方が大きくなるのではと市場はポジティブに捉えているように見える。
──ただ、本当に「トリプルブルー」「ブルーウェーブ」が実現するとは限らない。
そのとおり。もし大統領も上院も下院も民主党が勝つことができるならば、4年で2兆ドルは可能だろう。ただ、お金がない中でインフラ投資をすることになると、長期金利が1%とか2%に上がってしまうかもしれない。そうなると、景気の下押しになり、株式市場から債券市場に資金が流れてしまう。つまり、株式市場にとってはネガティブである。