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2020.12.23

日本の大問題「後継者どうする?」に差し込む光明

スモールビジネスオーナーの知られざる武器──それは、数々の困難を乗り越えてきた人間力です。彼らが対峙してきた問題や経験を分かちあえば、きっと、新しい課題の解決につながるはず。

Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスはタッグを組み、日々奮闘するスモールビジネスオーナーの皆さんと共に「お悩みピッチ」を開催しました。それは業界や年齢を超え、経営者同士で日々の課題を共有し、共に解決策を模索する場です。

今や、スモールビジネスオーナーの数だけ悩みがあれば、その数だけ知恵もある。皆で手を取り合い、共に前を向いて進むためのムーブメントをここから起こします。


第6回の「お悩みピッチ」は、前回に引き続き、伝統工芸に携わる経営者の皆様にお集まりいただきました。工芸界はもちろん、経営者なら誰もが将来を考えたときにぶち当たる最大の壁、後継者問題に斬り込みます。

数年前からたびたびニュースになる「黒字倒産」。その背景には、家族経営が多い中小企業の中でも少子高齢化が進み、後継者が見つからずに自主廃業せざるを得ないという深い闇が隠れています。どんなに業績が好調でも、どんなに世界へ誇れる技術があっても、後継者がいなければ未来へつなげることはできません。今回のお悩みは、いまの日本が直面する深刻な問題を考えるための糸口になるはずです。


お悩み「後継者をどうするか?」




お悩み人は、Hacoa代表の市橋人士さん。福井県鯖江市で木工芸を営んでいますが、越前漆器の伝統工芸士にも認定された先代は義父にあたり、市橋さんは婿として木工所を継ぎました。市橋さんは独自に、木工とITを組み合わせることへ活路を見出し、木材だけでできたキーボードなどが有名な木製雑貨ブランド「Hacoa」を立ち上げました。今では、銀座をはじめ全国にブランド直営店をもつまでに成長させ、若い職人を多数抱えながら、新しい事業構想にも積極的に取り組んでいます。

工芸技術の価値を引き出して躍進し、カリスマ性あふれる経営者である市橋さんですが、そのキャリアはひとりの職人として始まりました。娘婿と義理の父という関係の先代とは衝突することも多かったそうですが、他人であるが故に厳しく接してもらえたと振り返ります。だからこそ、次の後継者を考えた時、我が子には甘くなってしまうのではと不安があるそう。数年後に引退も視野に入れているという市橋さん、若い世代にどう会社を任せるべきか、息子さんに継いでもらうのが本当に最善なのか、お悩み中です。

後継者をどうするべきかという問題に対して、お助け隊が4つのアドバイスを出しました。

1.経営者として正しく悩め
2.後継者も正しく悩め
3.後継者は仲間を作れ
4.後継者にライバルを与えよ

経営者として正しく悩め


お助け隊一人目は、川越で代々続く人形店を営む須賀栄治氏。海外にも支店をもち、日本人形界の重要な発信源となっているスガ人形店は、栄治氏で五代目。先代である父親は今でも強い発言力をもっており、五十歳になる栄治氏に対しても親心からの口出しが度々あるそうです。

「店を継ぐことは当たり前だと思っていましたし、父は『お前の好きなようにやっていい』と言っていました。でも、いざ店を継いだら、とにかく細かく口を出してくる。親だから余計に心配してしまうというのも感じますが、親子としてより、経営者同士として向かい合って欲しい。自分の成功体験で子供のやり方を判断してはいけないと思います」



最近では、娘さんを見ていてもデジタル知識の違いに驚くという須賀氏。時代環境は劇的に変わったのだと親は認識し、若い世代の吸収力や新しいやり方を信じた方がよいとアドバイスしました。


後継者も正しく悩め


お助け隊二人目は、山梨の富士吉田で織物業を営む前田市郎氏。時代に先駆けて天然綿に注目し、山梨の伝統産業であった絹織物の製法を利用してオーガニックコットン生地を生産しています。前田氏自身も職人であり、大正時代から続く家業として父親の後を継ぎました。

「父からも祖父からも『継げ』と言われて育ち、自分でも疑問を感じることなく職人の道に入りました。でも職人になった後で、周りの友人と自分を比較して、この道に進んで本当に良かったのか悩んだ時期があります。だから、自分の息子には『継げ』とは一切言わなかった。本当は、自分の代で辞めるつもりでいたんです」

そんな前田氏に転機が訪れたのは一昨年。SEをしていた息子さんが実家を継ぐために戻ってきたのです。

「創業100周年を祝った際に、その歴史を終わらせてはいけないと息子なりに感じたそうです。息子は当時34歳、職人としては遅すぎるスタートでしたが、悩み抜いて決意した人間の覚悟を感じました。後継者側も自分で決断して責任を負うべき。そのために、なぜ継ぐのがしっかり悩み抜いて覚悟を決める時間が必要なんです」



今では、SEだった技術を生かして社内オンライン事業を手伝ったり、社外業務も副業として請け負ったりしているという息子さん。SEを続けることで職人業との精神的なバランスを取っているそうです。前田氏は、息子さんへプレッシャーをかけないこと、先走ってお節介をやかないことを自分に課していると嬉しそうに語りました。


後継者は仲間を作れ


前田氏に続き山梨は市川大門、千年続く和紙の産地にて由緒正しい和紙メーカーの家に生まれた一瀬愛氏。和紙工芸を生かした雑貨ブランド「SIWA」の立ち上げを成功させ、現在は、父である社長の後を継ぐべく、ブランドプロデューサーとして経営にも携わっています。しかし、「社長の娘だから……」という社内の視線は日々感じているそう。ここがまさしく後継者問題の最大の難関。身内という理由だけで、厳しい目で見られるため「継ぎたくない」と怖気づかせてしまうのです。

「父からは直接『継げ』とは言われていませんが、両親が共に働く背中を見て育ち、その会社で働くことが自然だと感じていました。家族だからこそ人の3倍4倍5倍働け、と父には言われています。新事業のチャレンジに対して社内では金食い虫扱いされることもありますが、ブランドの立ち上げが成功し結果を出したことで、周りを気にしないで済むようになりました」



後継者はとにかく結果を出して自信をつけるしかない、という一瀬氏ですが、一緒に戦ってくれる仲間作りが大切だとアドバイスします。

「社内では、経営の透明化を進めて賛同者を増やしています。仕入れ値や経費の使い方など、家族経営で見えにくくなる数字も公開することで、社員の不満やモチベーションの低下を防げます。また、透明化されて社員の頑張りが数字に反映されると、会社の問題を『自分ごと』としても考えられるようになるはずです。社外で仲間を増やすために、勉強会や会合へは自己研鑽も目的として積極的に出席しています。本社は山梨にありますが、私たちが戦う相手は東京や海外にいる。外に出ることは自分の視野を広げる機会にもなります」


後継者にライバルを与えよ


最後のお助け隊メンバーは、東京・落合で染物工房を切り盛りする高市洋子氏。大手企業で働くキャリアウーマンでしたが、廃業しかけていた工房の管理を任され見事に再建したという、異色の経歴を持つ経営者です。工房主とは血縁関係がないにもかかわらず、すべてを任せてもらえたそう。周囲の手助けのおかげで、職人や地元コミュニティと信頼関係を築き、運営を切り替えやすかったと振り返ります。

実は、高市氏は、農業生産法人や中小零細企業の後継ぎアドバイザーとして7年間も活動してきた実績の持ち主。今まで多くの経営者たちにアドバイスしてきた貴重なノウハウを紹介してくれました。

「経営者の方たちにまず伝えていたのは、子供が継ぐのを前提にしないこと。そのために、他にも優秀な後継者候補がいる、いわゆるライバルがいると示すように提案してきました。後を継がなくてもいいという選択肢を子供に与えることができますし、ライバルと一緒に仕事をする中で気づくこともある。結局は、子供自身が選択することが大切なんです」



ライバルの出現によって人間関係がこじれることはないのか。高市氏は続けます。「個人同士が対立したら、人格批判をしたり感情で判断したりするのではなく、会社の問題として大きな視点で話し合うことが必要です。また、最終的に、子供が継ぐと決めた時にはライバル役のケアが大切。後継者候補として切磋琢磨した人間は将来的に経営者の右腕になり得ますし、会社の成長を担う人材だと言えます」


急がば見守れ


前回お悩み人として登場した江戸切子「華硝」の熊倉さんも、カリスマ職人の父と経営統括する母を持ち、現在は二代目経営者として奮闘中です。最初はまったく継ぐつもりがなかったという熊倉さんですが、家族と家業に対しての想いを次のように語りました。

「家の仕事と自分は関係ないと思い、他の企業で8年くらい働きました。でもやっぱり頭の片隅には、ずっと家業のことがあって離れず、戻ってきました。子供は親の姿を見て感じているものがあるんです。子供が答えを見つけるまで急がず待ってみるのがよいと思います」

お助け隊メンバーも家族で働くことの特別感を感じていると強く賛同。お悩み人の市橋さんも、最近は将来について色々な会話を息子さんとしており、世相を踏まえて自身の考え方も変わってきたと言います。「今まで、まずは職人経験が必須だと思っていましたが、最近は経営や事業企画など得意分野に特化してもいいように感じています。時代が変わるスピードも早いですし、若い人の感性を大事に、どんどん新しいチャレンジをしてもらいたいです」



今回の「後継者問題」というお悩みに対しては、継がせる側、継いでいく側、そして、継ぐ手伝いをしてきたプロという様々な視点からお助け隊のアドバイスやアイデアを得ることができました。スモールビジネスのオーナーの数だけ悩みがあれば、その数だけ知恵があり、そしてまた、経営者ならではの生き様や人生哲学、数々のストーリーがあります。経営者本人も気づいていない武器「数々の困難を乗り越える人間力」で、これからも大きな絆の輪が作られると信じています。

人間力たくしましく、前を向いて進み続けるスモールビジネスオーナーを応援するために、Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスは経営者同士の助け合いが広がっていくことを心から願い、これからも力強くサポートしていきます。

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お悩みピッチ記事一覧
CASE1|ビジネスをスケールさせる「三方よし」の知恵
CASE2|新しいカルチャーを浸透させる、「フックづくり」のポイント
CASE3|最良の人材を確保するスタートアップの知恵
CASE4|ブランド認知を広めるには?スタートアップらしい「発信方法」
CASE5|言語化できない「感性」を伝えるための手法
CASE6|日本の大問題「後継者どうする?」に差し込む光明(本記事)


そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス

【お悩み人】
市橋人士(Hacoa 代表取締役

【お助け隊】
一瀬 愛大直 SIWAブランドプロデューサー
須賀栄治スガ人形店 代表取締役
高市洋子染の里おちあい 代表理事
前田市郎前田源商店 代表取締役

【ファシリテーター】
内田研一(Small Giants審査委員長)

Promoted by アメリカン・エキスプレス / Text by YAMADA / Illustration by 中尾仁士(DCRX)

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