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2020.12.16

言語化できない「感性」を伝えるための手法 

スモールビジネスオーナーの知られざる武器──それは、数々の困難を乗り越えてきた人間力です。彼らが対峙してきた問題や経験を分かちあえば、きっと、新しい課題の解決につながるはず。

Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスはタッグを組み、日々奮闘するスモールビジネスオーナーの皆さんと共に「お悩みピッチ」を開催しました。それは業界や年齢を超え、経営者同士で日々の課題を共有し、共に解決策を模索する場です。

今や、スモールビジネスオーナーの数だけ悩みがあれば、その数だけ知恵もある。皆で手を取り合い、共に前を向いて進むためのムーブメントをここから起こします。


今回の「お悩みピッチ」は、伝統工芸に携わる経営者の皆様にお集まりいただきました。参加者の中には、大正時代から続く家業を守る方や400年以上の歴史ある工芸家系に生まれた方もいらっしゃいます。経験やセンスに基づく個々の価値観の違いをどう共有するのか、モヤモヤしてしまう問題の言語化に挑みます。


お悩み「どうすれば感性を伝えられるのか?」




今回のお悩み人は、江戸切子の店「華硝」で取締役をしている熊倉ちさとさん。華硝というブランドは、江戸切子のカリスマ職人であり、ちさとさんの父である熊倉隆一氏が立ち上げ、自宅の一角で作品を売るところからはじまりました。現在は、熊倉家の父と息子が作品を制作し、母と娘のちさとさんが販売を担当するという家族経営のスタイルです。熊倉家にとって、華硝はまさに家族の絆そのものと言えます。

華硝が大切にしているのは技術と感性であり、洞爺湖サミットの国賓土産にも選ばれた美しい作品は、伝統の文様を大事にしつつもシンプルモダンに見えるデザインが特徴です。その美しさに魅了され、時には海外の有名ガラスメーカーからも弟子入りの希望があるという華硝の工房。後継者となる職人を育てていく上で、技術は教えることができても、華硝らしさを表現し、デザインするための発想や感性を伝えるのは難しい、と熊倉さんは悩んでいます。感性、センス、物事の捉え方…言葉にしにくいことは、どうすれば人に伝えられるのか。目には見えない難題に、お助け隊が斬り込みます。

感性の伝え方という問題に対して、お助け隊は3つのアドバイスを出しました。

1.映像化して客観的に見る機会をつくる
2.人間性を成長させる
3.ニーズを読む


映像化して客観的に見る機会をつくる


お助け隊の一人目は、東京・落合で染物工房を切り盛りする高市洋子氏。大手企業で働くキャリアウーマンでしたが、廃業しかけていた工房の管理を任され見事に再建したという、異色の経歴を持つ経営者です。地元工芸界に新風を吹き込んだ高市氏は、マニュアルもなく職人の発想と工夫によってのみ伝承されてきた染色技術を次世代へつなげるため、工房の新しい取り組みについて紹介しました。

「作業場内をカメラで定点撮影したり、会社のスマホを使って職人の手元の動作を撮影するようにしています。当初は、撮影した映像を外部発信して工房のPRにするのが目的でしたが、この映像が職人同士の学びにもなると気がつきました。普段、他の人の作業をじっくり見る機会もないですし、感性の『共有』に役立っています」



ただし、感性については個々が本来持っているものを活かせばいいのでは、と高市氏は続けます。「染物の場合、どんな配色にするかが最後の決め手であり、そこに職人の個性が最も出ます。私自身は、感性や個性はそれぞれ違っていてもよいかと思っています」


人間性を成長させる


お助け隊の二人目は、山梨の富士吉田で織物業を営む前田市郎氏。時代に先駆けて天然綿に注目し、山梨の伝統産業であった絹織物の製法を利用してオーガニックコットン生地を生産しています。前田氏自身も職人であり、家業として父親の後を継ぎました。織物制作のために決まった設計図はあるそうですが、糸の選び方や細かな調整に、やはり職人個々の感性は必要だと答えます。



「私たちが作るものは生地なので、デザイナーさんの要望や最終的な商品イメージを思い描いて、生地に反映できるかが大事です。機械を使い、同じ素材で同じ作り方をしても、職人個人の経験や感覚の違いで仕上げは全く変わります。やはり良いものを作るためには、人間性の成長が必要です」大正時代からの家業を引き継いだ職人である前田氏の言葉は深く、説得力がありました。


ニーズを読む


お助け隊三人目は一瀬愛氏。一瀬氏は、千年続く和紙の産地、市川大門の出身。由緒正しい和紙メーカーの家に生まれ、和紙工芸を生かした雑貨ブランド「SIWA」の立ち上げを成功させました。現在は、父である社長の後を継ぐべく、ブランドプロデューサーとして経営にも携わっています。職人たちの個性を束ね、ブランドとしての統一感や「らしさ」を追求したい場合にはどうすればよいのか、自身の経験をもとにアドバイスします。

「実際に作品が並ぶ売り場や商品棚をイメージしてみるといいと思います。自分の場合は、どのお店に並べたいか目標を定め、そこを目指して準備しました。隣に並ぶライバルブランドも想定し、ライバルとの違いを研究することで、自分たちの『らしさ』や大事にすべき点に気づくこともあります」

このアドバイスは、熊倉さんに別の気づきも与えたようです。「最終的に、母が作品を目利きして売り物にするかどうか決めるのですが、最近、『華硝らしくない』と思っているものが売れることも多く驚いています。工房内の技術や感性の継承だけでなく、お客様が何を求めているかのマーケティングも必要なのかもしれません」

お助け隊の四人目、鴻巣人形発祥の家から400有余年、川越で代々続く人形店の五代目である須賀栄治氏が、自身の考えを語ります。

「自分は、人形職人のディレクターのような立場なので、長年、個々の職人さんの違いを見続けてきました。腕の良し悪しはもちろん大事ですが、時代の空気を読み、流行を取り入れられるかも大切なポイント。人形の表情や小道具も毎年変わっているんです。なにも形を変えないように思われる伝統工芸ですが、時代に合わせて変えていくことで価値が出るし、そこに面白みがあると感じています」


 
売り場や時代のニーズを読む、という視点に対して、将来を見越したさらに大きな視点を示したのは、次回お悩み人として登場する市橋氏(次回にご期待ください!)です。

「感性というのは、やはり言葉で伝えられるものではないような気がします。結局は、作品の質や完成度の問題なので、その会社やブランドの問題として考えるべき。ブランドの伸びしろを作るためには歴史や個人の考えを押し付けず、出来上がったものを見て、いいのか悪いのかみんなで議論したり、共有していく環境が大事だと思います」

実は、市橋氏は鯖江市の木工工芸を活かして事業を拡大させていった敏腕経営者。自身も元は職人であり、新しいブランドを立ち上げ成功させた経験から、様々な考えを取り入れて成長する余地を残しておくべき、とアドバイスしました。


世界観の共有へ


お助け隊のアドバイスを受け、まずは「世界観の共有」という大きな視点で考えてみると答えた熊倉さん。自分自身でも言語化できなかった様々な思いや経験がつながり、進むべき方向が見えてきたようです。熊倉さんが日々感じていた日本橋の地域性やその世界観についても、生き生きとした表情で語ってくれました。

「自分のお店がある日本橋は、長年続いている名店がたくさんあります。日本橋全体に伝統やしきたりを守ることがカッコイイという世界観が出来上がっているんです。その世界観があるからこそ、お店同士でも助け合い学ぶことが多い。社内でも、まずは日本的な世界観をみんなで共有することが必要で、その後に技術や感性はついてくるものだと思いました」



今回、職人・ディレクター・経営者など、それぞれの目線から語られた「感性」の問題。お助け隊の前田氏が、発言の中で「作品に正解はない」と言っていたように、感性にも正解はありません。そしてこれは感性に限った話ではなく、ビジョンやミッション、経営者としての想いを伝えていく際にも同じことが言えるはず。だからこそ、皆で語り合い共有することが大事なのではないでしょうか。

Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスは経営者同士の助け合いが広がっていくことを心から願い、これからもサポートしていきます。


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CASE2|新しいカルチャーを浸透させる、「フックづくり」のポイント
CASE3|最良の人材を確保するスタートアップの知恵
CASE4|ブランド認知を広めるには?スタートアップらしい「発信方法」
CASE5|言語化できない「感性」を伝えるための手法(本記事)

 
そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス


【お悩み人】
熊倉ちさと華硝 取締役

【お助け隊】
一瀬 愛大直 SIWAブランドプロデューサー
須賀栄治スガ人形店 代表取締役
高市洋子染の里おちあい 代表理事
前田市郎前田源商店 代表取締役

【ファシリテーター】
内田研一(Small Giants審査委員長)

Promoted by アメリカン・エキスプレス / Text by YAMADA / Illustration by 中尾仁士(DCRX)

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