なぜSNSでの誹謗中傷はなくならないのか? 今すぐできる法的対策とは

Fabio Camandona/EyeEm/Getty Images


日本ではこのような状況ですが、このインターネット上での誹謗中傷に対する法的措置について、世界的な潮流はどうなっているのでしょうか。

アメリカ
「世界でもっともSNSで殺害予告を受けた人物」として話題となったジャスティン・ビーバーは、2020年6月、性的暴行を受けたとネット上で告発したツイッターのユーザー2名に対して、「事実無根」として2000万ドル(約21億円)の損害賠償請求を起こしています。

SNS上での誹謗中傷やデマの拡散はアメリカ国内でも問題になっており、2020年5月28日、トランプ大統領(当時)はSNSの規制強化に向けた大統領令に署名しています。しかし、実効性は乏しく、表現の自由との折り合いをどうつけるのか、政府による言論弾圧防止との兼ね合いなど、問題は山積しています。

ドイツ
ドイツでは、難民に対するSNS上でのヘイトスピーチが問題視されていました。それを受けて、2017年6月に、ヘイトスピーチや誤った情報の拡散防止対策として、ネットワーク執行法が成立しています。この法律の執行に伴って、表現の自由が侵害されるのではないかという議論も起こっています。投稿などについて削除を行うかどうかの判断はSNSの事業者に委ねられており、その判断が難しいことも課題となっています。

フランス
2020年5月、インターネット上でのヘイトスピーチなどの違法コンテンツの削除をオンライン・プラットフォームの事業者に義務付ける法律が下院で可決されています。しかし、憲法院から内容の一部が違憲であるとの判断が出たため、違憲部分を削除・修正し、同年6月25日に公布・施行されています。この法律の施行に伴い、放送行政監督機関のもと、ヘイトスピーチ観察局が置かれ、学校でヘイトスピーチ問題の啓蒙教育を行うことなどが定められました。

韓国
韓国でも芸能人に対する誹謗中傷が問題になっています。アイドルグループKARAの元メンバー、ク・ハラさんなど、投稿を苦にして自ら命を絶ってしまったアイドルや芸能人が続出したことから、「指殺人」という言葉まで存在するほどです。芸能人の個人情報の漏洩が日常茶飯事となっており、処罰を強化するべきだとの声が高まっています。

今困っている人にしてほしいこと


世界中でインターネット上の誹謗中傷に対する問題意識は高まっており、その解決策が模索されています。日本では、政府与党が有識者会議をつくり、政府としての政策集を取りまとめるなど、改善に向けて着々と議論が進められているのも前述したとおりです。
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文=元榮太一郎

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