ビジネス

2020.11.07

誰でもできるロゴづくりのプロセス。「言葉」でデザインする

イラストレーション=尾黒ケンジ


発注者の想いに沿うコンセプト探し


もうひとつ、ノンアルコール専門店「the non-al stand」のロゴの制作プロセスをご紹介します。まずは、関連する言葉を羅列していきます(1)。


対象にまつわる言葉を、言葉同士の関連性も利用してたくさん書いていく。

ノンアル、non-al、若者向け、ヘルシー……。試しにひらがなで書いたとき、ふと気づきます。「NON」だとネガティブな響きがするのに、「のん」だと字面がかわいくてポジティブになる。これなら「アルコールを否定するわけでなく、お酒を飲めない人でもカジュアルに楽しめるノンアルコールの文化をつくりたい」という発注者の想いを表せる。その狙いを込めて、ひらがなの「のん」という言葉を、ロゴデザインのコンセプトにしました(2)。


話題になった「のん」のロゴ。現在はオンラインや都内各所でクラフトジンも販売。

応用、ほかのロゴの観察


世の中のロゴも観察してみましょう。国際輸送サービスの「FedEx」のロゴは、Eとxの文字の隙間に矢印が隠れていて「スピード/正確さ」の意味をもたせています(アラビア語の右から左に読む文字組みでも矢印が!)。このように、矢印やハート、はてなマークなど人々の共通認識になっている記号を使うのも、受け手が想像するイメージを利用した素晴らしい方法です。少し観察するだけで、企業がどうありたいかがくみ取れて、愛着すら湧いてくるロゴ。言葉や文字に意味が混ざるだけで、ブランドに素敵な魅力を与えてくれます。


世界共通で理解されるモチーフを仕組み、ストーリーのあるロゴに。

私はデザインという曖昧なものをお客さんに買っていただくために、つい説明したくなるような言葉やビジョンの設計を心がけています。だからこそ絵を描くことに抵抗がある方でも、言葉を整理するだけで魅力的なデザインはつくりえます。デザイナーじゃなくてもできる気がしてきませんか? そう思えたら、自分自身、チーム、関わっているプロジェクトや新商品など、まずはロゴをつくってみましょう。デザインは、どんなプレゼンよりはやく伝わって、どんな言語よりも広く伝わる可能性のある表現です。ロゴ、チラシ、本、服……。身の回りのものを観察するだけで、プロの仕事に触れ勉強することができる、とっても身近で取り入れやすい能力なのです。そんなデザインの視点をもつことは、あなた自身のブランドやビジネスがどうあるべきかをコントロールする新しい切り口になるはず。ほとんど絵は描かない、言葉でデザインするこの2ページの体験が、みなさんのデザインの芽になれば幸いです。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

一森加奈子◎電通Bチーム「タイポグラフィ」担当。A面・アートディレクター。趣味のグラフィティやポップアートを中心に、文字を扱った作品づくりを得意とする。

文=一森加奈子 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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