「自然欠乏症候群」への危機感 DX時代のワークライフバランス

Kohei Hara/Getty Images


そして、市民農園界のレジェンド(全国から見学者や取材が来るほどの方)に話を伺った。

レジェンドからは、種や苗の見極め方、土のpHや菌の種類や量、肥料計画、自然災害や害虫対策、隣接・連作障害への備え、R戦略者(短期での収穫)・K戦略者(長期での収穫)などさまざまご指導いただいた。話を伺う中で、期待値(時期、量)、部分-全体最適、ポートフォリオ論、リスク管理など、銀行で議論している枠組みや理論と、何ら変わりないことに気が付いた。

3期目に入った今年は、通期で50種類の野菜を育てる計画を立て、順調に進行している。昨年の豪雨、今年の夏の猛暑や長雨などにも辛うじて持ちこたえ、収穫ができた。何より、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出た時には、もちろんステイホームが最優先だったが、近隣の散歩の延長で、早朝や夕方には子供たちと畑作業をしていた。

おかげで彼らも農業スキルが、かなり身についたようだ。いまでは、苗や葉を見るだけで野菜の名前を言えるようになったし、どの野菜にどの虫が来るか、その本来の役割(植物・生物ともに生存戦略、受粉機能など)は何かも少しずつわかってきたようだ。

コロナ禍で在宅勤務が増え、また出張が皆無に近い形になり、家族との時間が増えた。早朝の散歩ついでに野菜を収穫し、朝食で食べるようになったし、スーパーでは、肉や魚くらいしか買わないようになった。

市民農家同士で野菜を交換したり、近所におすそ分けしたりしながら、いろいろな会話ができるようになった。また、保育園や学童の送り迎えの頻度も増え、子供たちとの会話も圧倒的に増えた。学童と保育園からの帰り、ついでに畑に水やりすることも日常となった。

土日くらいは、のんびり、のらりくらりと農業をすることにしよう。行動や思考のスピードを落として、季節を感じながら自然のありがたみを感じ、収穫の恵みを得る。これがコロナ禍のわが家の新しい生活様式、ニューノーマルだ。

連載:「想定外」の研究
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文=蛭間芳樹

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