トビラシステムズ 代表取締役社長 明田篤

2020 Finalist Interview

トビラシステムズ 代表取締役社長 明田篤

#07

警察庁や大手通信キャリアとの連携で
他社には追随不可能なポジションに

2019年における特殊詐欺(オレオレ詐欺、還付金詐欺、預貯金詐欺、融資保証金詐欺など10類型の総称)の年間被害額は、316億円にもなる。14年以降の被害額は減少傾向にあるというが、警察が発生を認知した件数は逆に増加しているという。手口は複雑化し、依然として新たな被害が報告され続けている。明田篤が代表取締役を務めるトビラシステムズの主力事業は、この特殊詐欺を含む迷惑電話を防ぐサービスである。

「当社が開発した迷惑電話フィルタ『トビラフォン』は、迷惑電話検出率99%という実績を誇ります。高確率での検出を可能にしているのは、迷惑電話の番号を集積したデータベースです。月間で約1,022万人の利用者と警察から提供された情報に独自のアナライズを加えて、スピーディにブラックリストを作成する仕組みになっています。これまでに11億件以上の電話番号情報を収集・分析し、統計や機械学習を用いたアルゴリズムでデータベースを構築してきました」

すでに研ぎ澄まされ、常に進化し続けるデータベースによって圧倒的な競争優位性が築かれているため、これから迷惑電話のフィルタリング事業に他社が参入してくるのは非常に困難だ。また、積極的なR&Dと知財戦略によって「トビラフォン」に関する特許13件を取得していることもあり、事実上、トビラシステムズと競合する会社は存在していない。

データベース構築のカギを握る警察との密接なパートナーシップ醸成には、10年近くの歳月をかけてきたという。最初は地元である愛知県の一部エリアで実証実験を行うところからスタートした。その効果が確認されたことで他県にも広がり、現在は警察庁と覚書を取り交わすまでになった。全国各地の迷惑電話情報を取得できる万全の体制が整っているのだ。

「トビラシステムズの19年における売上高に占める割合は、『モバイル向けフィルタサービス』が75.7%、『固定電話向けフィルタサービス』が10.9%、『ビジネスフォン向けフィルタサービス』が1.6%です。モバイル向けのサービスは、携帯電話の大手キャリア全社に導入済みです。アプリで提供し、オプションパックなどに組み込まれています。このビジネスモデルではプロモーション、顧客獲得、料金回収をキャリア側が行うので、当社はアプリ開発と運用保守に集中でき、利益率が高くなっています」

大手通信キャリアとのパートナーシップを通じて利用者に届けられる迷惑電話フィルタサービスは、安心・安全を担保する生活インフラとして機能している。収益性のみならず、公益性も高い。

祖父が困っている姿を見てから
寝ずにコードを書いた日々

トビラシステムズが迷惑電話フィルタサービスを提供するようになったきっかけは、明田の祖父の苦難にあったという。

「一人暮らしをしていた祖父が原野商法(ほとんど価値のない土地を『別荘地として値上がりする』『まもなく駅ができる』などと偽って、高額で売りつける商法)に引っかかってしまい、それからいろいろな勧誘電話がかかってくるようになりました。困っている祖父を見た私は固定電話向けのセキュリティサービスを探してみたのですが、まったく見つからない状況で……。ITエンジニアである私にとって、それが不思議で仕方ありませんでした。データベースを構築し、共有して問題解決にあたる手法は、IT業界では当たり前のことですから」

トビラシステムズの社長であると同時に、もともとITエンジニアとしてシステム開発に従事していた明田は「世の中にないのであれば、自分たちでつくるしかない」との強い想いで、固定電話向けセキュリティサービスを生み出すべく開発に着手した。明田自身が回路を設計し、プログラミングを行った。寝ずにコードを書いてきたという。そうして最初に誕生したのが、固定電話に取り付けるアタッチメント型の端末だった。

「この端末の利用者からは本当に喜んでいただいて、『おかげで安心して電話に出られるようになったよ。ありがとう』といった感謝の言葉を頂戴することができました。それらの言葉が、私の励みになりましたね。祖父は残念ながら端末の発売前に亡くなってしまったのですが、完成した製品を見てもらうことはできました」

鐘を打ち鳴らした後も
まだまだ明田の挑戦は続く

誰かの助けになりたい。社会をよりよいものにしたい。心の奥底から湧き出る熱いものがアントレプレナーとしての明田を走らせてきた。トビラシステムズは、19年4月に東証マザーズへの上場を果たし、20年4月からは東証一部に市場変更している。19年4月25日、平成最後の上場企業として東京証券取引所で鐘を打ち鳴らしたとき、その場に立ち会った明田のご両親は涙を流して喜んでくれたという。

30代で上場企業のトップとなったいま、明田を突き動かしている熱源は何だろうか。

「私はプロのミュージシャンを目指して大学を中退したのですが、その道をあきらめて、最初はフリーランスのエンジニアとしてIT業界に入りました。中学生の頃からギターを弾くのと同時に、父の影響でプログラミングも始めていましたから。現在の私はミュージシャンではありませんが、いまでも歴代のロックスターたちが社会に与えたインパクトについて想いを馳せることがあります。彼らがどのように生きてきたか、何を残してきたか、死ぬときにどれほど多くの人が悲しんでくれたか。明田篤個人としては、そういうことを起業する前から考えてきましたし、いまでも強烈な熱源になっています。ちなみに、かつてのバンドメンバーのふたりとは、現在もトビラシステムズで一緒に働いています」

今年の3月からトビラシステムズは、リモートワークに向けたBtoBのソリューションとして「トビラフォン Cloud」の提供を開始した。ニューノーマルの時代を迎えて、明田がこれから新たに生み出し、残していくものは、まだまだ増えていくに違いない。

トビラシステムズ株式会社

本社/愛知県名古屋市中区錦2-5-12パシフィックスクエア名古屋錦7F
TEL/050-5533-3720
URL/https://tobila.com/
従業員数/65名(2020年9月現在)

トビラシステムズ 代表取締役社長 明田篤

1980年、愛知県生まれ。2002年、ITエンジニアとしてのキャリアをスタート。06年、株式会社A&A tecnologia(現:トビラシステムズ株式会社)を設立。11年、日本初となる迷惑電話防止機器「トビラフォン」を開発・発売。19年、東証マザーズに上場。20年、東証一部に市場変更。

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text by Kiyoto Kuniryo photograph by Shuji Goto edit by Akio Takashiro