ビジネス

2020.11.10

業界の「壁」をどう乗り越えるか デジタル化の波の捉え方

ビジネスにおける新しい挑戦には、常に既得権益の「壁」が立ちはだかる(Unsplash)

IT化を進める会社のコンサルティングを手がける企業で代表を務めている私は、これまでに様々な業界で仕事を経験してきた。そのため、企業や業界のあいだにある「壁」の存在を、人並み以上に痛感してきたと自負している。 

私が企業の「壁」に対して初めて疑問を感じたのは、1996年に富士通からソフトバンクに移り、営業として多くのSIベンダー(別称:システムインテグレーター)と仕事をするようになったときのことだ。

本来であれば、SIベンダーの使命とは、顧客が必要としている情報システムを導入することで、彼らのビジネスの発展に寄与することだ。そしてそのためには、たとえ競合企業と手を組んででも、顧客のことを第一に考えて仕事をするべきだと思う。 

しかし当時、私の周りにいたSIベンダーたちは、顧客を自社製品で固めさせ、囲い込むことを優先しているように見えた。

私はときに「競合企業と協力した提案にすべきではないか」と説得したこともあったが、当時は「競争相手と組むくらいならば、商談を落とした方がましだ」と豪語する人もいる状況だった。私の方が「非常識な提案だ」と叱られたこともある。今では随分と変わってきているようだが、このとき、企業のあいだには紛れもなく「壁」があるということを痛感した。 

壁の中からは壁の存在に気がつかない


企業だけでなく、さらに業界のあいだにも大きな「壁」はそびえている。書籍のEC企業「イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)」を1999年に立ち上げたときのことだ。ソフトバンク、ヤフー、セブン−イレブン、トーハンの合弁会社ということで、話題性もあり注目を浴びた。しかし出版業界には不評で、当初は彼らからの協力は殆ど得ることができなかった。 

当時は「インターネットなんて単なる一過性の流行でしょ」とも言われていた時代。「本は書店で買うのが当たり前。余計なことをするな」と追い返されることもあった。それから、会社を出版の街である神保町に移転し、彼らの懐に飛び込むことで、段々と協力を得ることができるようになったが、それまでには非常に長い時間を要した。この時ほど、業界の「壁」を感じたことはない。
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文=鈴木康弘

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