デジタル庁は教訓を生かせるか DX後進国の日本が歩む3つのシナリオ

Toshi Sasaki/Getty Images

7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)」に、以下の記述がある。

「我が国社会全体のデジタル化を強力に推進する。まずは、デジタル・ガバメントの構築を、早急に対応が求められる、言わば一丁目一番地の最優先政策課題として位置付け、行政手続のオンライン化やワンストップ・ワンスオンリー化など取組を加速する。また、民間部門のDXを促進し、民間の投資やイノベーションを誘発する環境づくりを進める」

欧州各国は、グリーンリカバリーやグリーンニューディールを掲げ、気候変動、自然環境、サステナビリティの領域で、新たな国際競争力の獲得を確実なものにしようとしている。一方、日本は、この基本方針で、出遅れたデジタル化の巻き返しを宣言したようにも見える。周回遅れを何とか巻き返そうというのが、悲しいかな、今年の社会・経済分野での「骨太」政策だと言うのだ。

そして、この方針を受け、遅ればせながら新内閣もデジタル庁設立を目玉政策に掲げた。

コロナ禍で顕在化したデジタル途上国の日本


以前から指摘されていた日本のデジタル化の遅れは、まさに新型コロナウイルスの感染拡大で顕在化した。コロナ禍は、グローバルリスクのひとつであるが、いわば世界規模で、同時に危機対応の短距離走、そして長距離走の共通テストを受けているかのように、現在もなお進行している。

国境や都市の封鎖、感染拡大の防止、医療崩壊への備え、経済活動との両立、コロナ禍終息後の成長競争など、国や都市の危機対応力を試すという点では、とても興味深い事象が、いままさに目の前で起こっている。

その中にあって、「接触」を前提として運営されていた社会のさまざまな機能が停止した。情報、モノ、カネの流通システムに、「ヒト」という一要素が加わるだけで、感染拡大の危険性が増すことに、世界中が困惑している。職場でも学校でも、ヒトとヒトの接触から生まれる未知なる感染リスクを回避するべく、日本でも自粛が要請された。

今回のコロナ禍で明らかになったのは、行政サービス、民間の事業継続、教育現場、医療・介護など、あらゆる側面での、海外のICT/DX先進国と日本との圧倒的な差だった。デジタル化が進んだ国や都市では、今回の「非接触」への社会運営のシフトや適応に、迅速かつ的確に応答することができた。

全てを称賛するつもりはないが、デンマークのCPRナンバーを活用した迅速な危機対応公共サービスの提供、フィンランドの ICTを活用した教育、韓国の感染者・感染場所の情報公開、シンガポールの感染者追跡アプリ、そして何より台湾のデジタル総括大臣のオードリー・タン氏を筆頭としたコロナ禍への総合対策など、日本との差異を挙げれば枚挙にいとまがない。
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文=蛭間芳樹

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