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展覧会ディレクターを務めるドミニク・チェン

SNSの台頭により、コミュニケーションの手段は格段に増えた。コミュニケーション過多の時代になったと言っても差し支えないだろう。

しかし、私たちはその恩恵に預かり、以前に増してお互いを「わかりあえる」ようになっているのだろうか。文字や画像、動画のみから受ける印象でわかりあった気になってはいないだろうか。

10月16日から「21_21 DESIGN SIGHT」では、情報学研究者のドミニク・チェンが展覧会ディレクターを務める「トランスレーションズ展ー『わかりあえあなさ』をわかりあおう」が開催されている。

同展では、ドミニクの「翻訳はコミュニケーションのデザインである」という考えから「翻訳」を「異なる背景を持つ者同士が意思疎通を図るプロセス」と捉え、「翻訳」と「コミュニケーション」をキーワードに作品を展示している。

「わかりやすさ」が求められる現代に、「わかりあえなさ」を体験することは、私たちにどのような気づきをもたらすだろうか。


「現代におけるコミュニケーションがどんな意味を持つのかを考え直したとき、『わかりあえなさ』というテーマが浮かび上がってきました」

展覧会が形になったきっかけを、ドミニク・チェンは次のように振り返る。

「コミュニケーションはわかりあえることを前提としていますが、さまざまなコミュニケーションをつぶさに観察していくと、実はわかりあえていない部分が非常に大きな比率を占めているのではないか。それを捨て去ってしまうのではなく、そこにこそコミュニケーションをより価値のあるものにしていくためのヒントが含まれているのではないか。そう考えたのです」

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マイクの前に向かって言語を発すると、23ヶ国語に翻訳された言葉がスクリーンに映し出される「ファウンド・イン・トランスレーション」 Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン

たとえば、母語が日本語の友人と標準語で会話していたとしても、微妙なニュアンスが伝わっていない。もしくは話が噛み合わずモヤモヤした経験はないだろうか。

「会話の最中には、自分の体のなかで渦巻いている感情など、言葉未満のさまざまな感覚を、その瞬間、瞬間に言葉に置き換えています。突き詰めると、発話者がどんな人生を送ってきたかということを知らないと、その人が使っている言葉にどんな重みがあるのか、なぜその言葉を選択したのかがわからない。でも、そうした何気ない言葉の受け取り方がいろいろあることに気がつくと、いつもの会話が愛おしいものになる。

同じ言語を使って会話をしているのに、相手は違う意味で使っているかもしれないという前提で話せば、コミュニケーションの取り方が変わってくるし、ものすごく発見的なものになると思うんです」

写真=山田大輔 文=本多カツヒロ

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