ビジネス

2020.11.07

マーク・ベニオフに学ぶ日本の女性起業家 社会を変える「開拓者」の条件

社会を変えるトレイルブレイザー(開拓者)の本質とは(Photo by Getty Images)


まだ誰も挑戦したことのない領域にスタートアップとして飛び込む、その最初の1歩の重さについて2人は身をもって知っているだろう。

生き残るのは「成功と善行を両立する企業」


本書の中でベニオフは、何度も「成功と善行を両立する企業が生き残る」と断言している。近年のSDGsの取り組みや気候変動対策への注目度からも、企業の社会的な責任がより一層求められていることはわかる。そんな時代に企業が生き残るためのヒントとして、ベニオフは「自分の支持するものが何かを忘れないこと」を挙げる。

シナモンの平野も、自ら感じたある問題意識から起業しており、本書『トレイルブレイザー 』ではこんな点に共感している。

「社会課題を解決していく(ミッション)が大事であり、それがバイネームで誰のためなのかを具体的に思い浮かべられること、というベニオフの考え方に最も共感しました」

シナモン 平野未来
シナモンCEO 平野未来

シナモンは会社のミッションに「創造あふれる世界を、AIと共に」を掲げる。「現在のミッションは、3年前に子どもを出産したことがきっかけでした。出産のタイミングで痛ましい過労死の事件が報じられ、子供たちの働き方を変えていくのは、私たちの世代がするべきことなんだと強く思いました。子どものため、次世代のためという思いは、私たちの会社の核になっています」(平野)

このような強い信念が、企業文化やバリューとなり、会社を支える柱となる。ベニオフも、本書の中で、特に「バリュー」と「信頼」について多く言及している。自らも数値目標や利益ばかり見ていた時期があったことを振り返りながら、現代ではそれが通用しないことを以下のように指摘する。

「バリューは言葉ではっきりと言い表す必要があるが、それを一貫性のある行動に転換させない限り、真の価値は生まれない。バリューを企業文化の基盤とすることは、危機対応に当たって選択的、断続的、無秩序な形でバリューを適用するよりも、はるかに賢明で持続可能だ」

さらに「自分の価値観と共通するコアバリューを掲げる企業で働きたいと思う人が増えている」というベニオフに対し、平野もこんな考え方を持っている。

「社会にインパクトを与える企業は、多くの人が自分ごとに思えるミッションを定めていることが必要だと思います。いまの若い人たちは、社会貢献が核にない会社には勤めたくないという意識も強くなっているように感じます。ミッションやパーパス、バリューがしっかりしていない会社では人材も集まらず、事業として成立しないでしょう」

「社会課題意識」をもつミレニアル世代


一方、自らも20代である松岡は、特にミレニアル世代と呼ばれる20代から30代後半の層は「社会に強い課題意識を持っている」と指摘する。

「私たちのようなミレニアル世代やZ世代は、企業の取り組みが自分たちの信念に沿わないと気付くと、自分自身を裏切る行為になると考えて、企業は(社員からの)信頼を失ってしまいます」

ベニオフ率いるセールスフォースでは、このミレニアル世代が従業員の半分以上を占めるという。冒頭のジェンダーについての抗議活動の話からもわかるように、投資家や消費者だけでなく、これからは企業の内外からの声への「対応力」がより求められそうだ。
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文=田中舞子 編集=督あかり

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