──パナソニックがスポーツ事業として取り組むサッカーのガンバ大阪、バレーボールのパンサーズ、ラグビーのワイルドナイツ。それぞれ多くのタイトルを獲得している名門チームですが、今後の展開、特に収益化のプランはどうなっていますか。
まず、ガンバ大阪は、まだチーム経営が独り立ちできているとは言えない状況です。デジタルマーケティングの支援によって、ここ2年間の観客動員数は劇的に上がったものの、まだ安定はしていません。今後はサポートをより強化していきたい。
現在、プロ野球のトップチームは、年間100億円の収益を稼ぎ出していますが、プレイ人口やサポーター人口を考えると、中長期的にサッカーは野球以上の収益を見込めると考えています。まずはガンバ大阪の収益を、今の倍まで伸ばすことを計画しています。
これまで注力が不十分だったデジタルコンテンツを徹底的に掘り起こせば、十分達成できる目標です。
パンサーズとワイルドナイツについては、ガンバ大阪で構築した収益モデルを適用するなどして、さまざまなアプローチを仕掛けていこうと考えています。
ファンクラブの本格的な運営などによる独自の収益を見込んでいますが、ラグビーやバレーボールは、野球やサッカーとは条件が異なるため、想定値によるマーケティング戦略が組みにくい現状があります。
そのため、無理のある収益目標を設定するよりも、ガンバ大阪で培った仕組みを応用することで、チーム経営の負担を軽減する。ガンバ大阪を独り立ちさせることで、連鎖的にパンサーズとワイルドナイツも成長させたいと考えています。
ガンバ大阪で構築した収益モデルで、連鎖的に他のチームも成長させる(「事業戦略説明会 パナソニックが狙うスポーツ事業」より)
──複数のスポーツチームを保有しているからこそ可能な施策ですね。
成果を上げたマーケティング施策やマネジメントの成功スキームを「横展開」して、違うチームの運営でも共有できる。われわれが3つの異なる競技のプロスポーツチームを運営するバリューは、まさにそこにあります。
パナソニックが長い歴史のなかで構築してきたノウハウを駆使し、複数のチームを経営することで、全体的にどんな効果が出るのかを示せることは大きな変化だと思っています。
それこそヨーロッパの有名なサッカーチームは、ほとんど横展開をしていますが、その手法はサッカーがプロスポーツの主役であるヨーロッパだからできることであって、これまで日本では難しいとされていたことです。
日本のスポーツビジネスがグローバルへ進出するためには、それぞれ異なるスポーツを繋いで、相互にシナジーを生み出す必要があるのです。それが実現できれば、日本のスポーツビジネスがアジア全体をリードする存在になれるかもしれません。時間はかかるかもしれませんが、しっかりとそのように経営できる体制を構築していきます。
──3つのプロチームのほかにも、プロ化を目指す多くの企業スポーツに取り組んでいますが、片山さんが考える「プロ化」の定義とは?
解釈は人それぞれだと思いますが、私はプロ契約やアマチュア契約にかかわらず、そのスポーツを生業とする人々を集団にすることを「プロ化」だと定義しています。
ただ、日本のスポーツ界では、何をして「プロ」とするのかという定義そのものがあいまいで、解釈がそれぞれ違っているというのが現状なのです。
そのため、われわれは普段から、「プロ化」ではなく「事業化」という言葉を使うようにしています。事業化というのは、しっかりと収益を生み出し続けること。プロだからといって選手が自分の給与分だけの収益を出していても、事業としては発展していきません。1人1人が「どうすれば事業を発展させられるか」を考えている、そんな強い組織をつくり出すために「事業化」という言葉を使っています。