もうひとつの新製品「Zapps」は、ひどいネーミングだが、お察しの通り、新たに展開されるZoomのアプリストア・ビジネスだ。統合されたアプリ群を使うことで、理論上は、ビジネスにおける動画会議の難点が解消される。つまり、Zoomクライアントと、バックグラウンドで操作するアプリの間で画面を切り替え続ける必要がなくなる。
Box、Dropbox、Slack、Salesforce、ServiceNowなど35のアプリが、発足時からのパートナーに名を連ねており、Zappsは順風満帆のスタートを切れそうだ。
ソフトウェアにイベントとアプリストアが加わることで、Zoomはプラットフォームの様相を呈してきた。各社のハードウェアにZoomを搭載するという、以前から行ってきた提携も役に立つだろう。
こうした状況は、資産運用会社アライアンス・バーンスタインが10月26日に示した強気な見解の根拠となっている。同社はZoomのターゲットプライスを611ドルに引き上げたが、これはアナリストのあいだでも最高レベルの評価だ。以前にバーンスタインが示したターゲットプライスはわずか228ドルだった。
こうした朗報にもかかわらず、Zoomの成長物語のうち楽な部分は、すでに終わりを迎えている。
IT分野に特化した調査会社トランスペアレンシー・マーケット・リサーチは報告書のなかで、世界の動画会議市場は2027年までに116億ドル規模に成長すると予測している。この状況のなかでZoomは、依然としてマイナーな企業のひとつでしかなく、今後はシスコ、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンなどとの熾烈な競争にさらされるだろう。これらの企業はいずれも強大であり、市場シェアを維持・拡大するのに必要な、大規模なエコシステムと手段(例えば無料サービス)を備えている。
さらに付け加えるなら、急成長という魅力はあるものの、Zoomの株価はすでに安いとはいえない。
株価の状況は、予想株価収益率(PER)が178倍、株価売上高倍率(PSR)が104倍だ(10月26日時点)。株価は2020年に650%もの驚異的な上昇を示し、時価総額は1400億ドルに達している。
筆者が最初にZoomの買いを勧めたのは3月だったが、当時は株価が117ドルだった。この記事を書いている10月26日午前の株価は538ドルだ。サクセスストーリーは筆者も好きだが、投資家たちは、Zoomの次なる事業展開について楽観しすぎている。
グロース投資家たちは、いまZoom株を買っても360ドル程度にまで下落する可能性を考えておくべきだろう。