トランプが任命したNASA長官に「バイデン勝利でも続投を」の声

Photo by Win McNamee/Getty Images

2017年9月に米国のトランプ大統領がNASA(米航空宇宙局)長官に共和党議員のジェームズ・ブライデンスタインを指名した際、懸念を示す声が多くあがった。ブライデンスタインは元パイロットだが、宇宙に関する実務経験はなく、地球温暖化に懐疑的な見方を示していたからだ。

民主党所属の上院議員であるビル・ネルソンは当時、「NASAのトップには、政治家ではなく、宇宙の専門家が就任するべきだ」という声明を出した。また、共和党所属の上院議員であるマルコ・ルビオは、ニュースメディア「ポリティコ」のインタビューで、「ブライデンスタインの就任は、宇宙プログラムに壊滅的な打撃を与えることになる」と述べていた。

2018年1月に上院で採決が行われ、賛成50、反対49の僅差でブライデンスタインのNASA長官就任が承認された。NASA長官のポストは、前任のチャーリー・ボールデンが辞職してから1年間空席が続いていた。

しかし、事前の懸念をよそに、ブライデンスタインは就任からこれまで目覚ましい活躍を見せている。彼は党派を超えて多くの政治家から支持を得ており、NASAを新たな方向に導いている。また、米国外の宇宙ファンからの人気も高い。

大統領選挙でバイデンが勝利した場合、ブライデンスタインがNASA長官に留任できるかどうかに注目が集まっている。2018年1月の長官就任以来、ブライデンスタインは懸念を払しょくするために様々な取り組みをしてきた。

まず、2018年5月には地球温暖化に対する自身の姿勢を改めた。NASAの対話集会では、「私はコンセンサスを否定しない。気候変動は現実に起きており、その主たる原因は我々人類だ」と発言した。

また、ブライデンスタインは有人での月面着陸や火星探査を目指すという壮大な目標を掲げた。現段階でのゴールは、2024年までに男女の宇宙飛行士を月面に着陸させるというもので、ブライデンスタインはこの計画を「アルテミス」と名付けた。ちなみに、2024年は、トランプが大統領に再選された場合、2期目の最終年に当たる。

ブライデンスタインは、2019年5月にアルテミス計画について次のように述べている。「アポロ計画から50年後に、アルテミス計画によって再び男性宇宙飛行士と、初の女性宇宙飛行士を月に送り込むのは素晴らしいことだ。私には11歳の娘がいるが、彼女には自分もアルテミス計画の女性宇宙飛行士のような活躍ができるという希望を抱いてほしい」
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編集=上田裕資

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