優勝は僅差で愛知製鋼のプロジェクトに決定
結果は全てのセッション終了後、内閣府の石井氏より講評と共に発表された。
石井氏によると、決勝ピッチのプレゼンはどのチームも素晴らしく、1チームを選ぶのが難しかったとのこと。その中から僅差で優勝したプロジェクトが愛知製鋼の林氏がプレゼンした「被災者の心に温もりを」だった。
同プロジェクトは、災害時に避難所へ温かい食事を提供する「水だけで食べられるカップラーメン」の開発を提案。東日本大震災以降、大規模自然災害は9年で20件起きており、避難経験のある人は、16人に1人という計算になる。同チームのメンバー3人は、いずれも東海地方出身で、幼い頃から「いつか東海大地震が来る」と言われてきたという。
いつ自分が避難する立場になってもおかしくない状況で、林氏は避難所生活で困ったことをヒアリング。そこで見えてきたのが「食事」の問題だった。ヒアリングを重ねる中で「毎日乾パンやカロリーメイト、それが辛かった。温かいラーメンを食べたときは本当に幸せだった」という話を聞き、衝撃を受けたという林氏らは、電気もガスもないストレスフルな生活において、「温かい食事は、お腹だけではなく心も満たす」ことに気づいたと語った。
食事の大切さを考えた林氏らは、ヒアリング結果をもとに非常食のポジショニングマップを作成。「食べ物の温かさ」と「食べるまでの手間の大小」でマッピングした結果、手間が少なく、かつ温かい食事はほとんどないことが分かった。避難所ではお湯を作ることが想像以上に難しいためだ。
そこで開発を検討したのが「水だけで食べられるカップラーメン」。これは底に同社開発の発熱剤と反応用水を入れ、お湯が無くても10分で温かいラーメンが出来上がるというもの。今後は包装メーカーや食品メーカーとのアライアンスを視野に入れ、人気が高まっている登山市場からの参入を検討。認知を高めたうえで、避難所にも展開し、2024年には初期投資の回収を見込んでいる。
石井氏は「どのプロジェクトも素晴らしかったが、みんなが必要だと思えるものという点で、愛知製鋼チームに決定しました。技術はあるけれど実現していない、それを何が何でも実現しようという姿勢が素晴らしかったと思います」と評した。そのうえで、全体講評として「どのチームのプレゼンも、熱量があり、素晴らしい内容でした。ビジネスとして実際動くかどうかは、まだこれから。今後も頑張ってください」と語った。
見事優勝した愛知製鋼の林氏は「新規事業で大切なのは、とにかく動いてみること。3カ月間、CHANGEの仲間たちと相談しながら動けたことは、非常に勉強になりました。今後もプロジェクトの実現に向けて頑張ります」とコメント。
最後に決勝ピッチでモデレーターを務めたONE JAPANの濱本隆太氏(パナソニック株式会社 イノベーション推進部門)が「ここで終わりにせず、次のステップに向けてみんなで走っていきましょう」とコメントし、約3カ月間にわたって実施された「CHANGE」プログラムが終了。彼らの今後の活動に、引き続き注目していきたい。