人々をつなぐ「橋」としての美術。スクリプカリウ落合安奈が描く夢 #30UNDER30

(c)Kotetsu Nakazato


──日本のメディアでは、ミックスルーツの方の外見をもてはやす傾向があると思うんです。そんな状況に対して、感じることはありますか?

「ハーフ」として括られることは、個人的な意見ですが、あまりいいことではないと思いますね。「ハーフ」と言われることで「日本人とは違うもの」として線引きされるのは、小さい時から自分が体験してきたことです。ちゃんと一人ひとりを、一人の人間として見てほしい。どういうアイデンティティを持っているか。本人の声に周りが耳を傾けるところから始めないと、苦しむ人が後を絶ちません。

それと、もてはやされているうちはまだいいかもしれませんが、そこに潜むさまざまなステレオタイプによって苦しむ人もいます。また、その状況がいつ反転するかわからないと思うと恐ろしいです。大坂なおみ選手に対して日本で起きたさまざまな問題もしかりですが、都合のいいときだけ日本人、都合が悪くなったら急に外国人として排除する、みたいな迫害が起きるかもしれない。問題が山積みで、どこから指摘したらいいのか……という感じです。

──最後に、スクリプカリウ落合安奈さんにとっての「美術」とは。

日本にいると、自分のようなバックグラウンドを持つ人が回りに少なかったこともあって、小さい頃から嫌だと思ったこと、違和感を感じたことを共有するのが難しかった経験をしてきました。そういうときにでも、絵を描くことで、頭の中にあるものを外の世界に表出することができました。

美術によって、世の中とつながれたり、人々とつながれたりします。自分にとって、とても大事な「橋」のようなものです。国や言語を超えてつながり合うことができるビジュアルランゲージとして、美術にとても魅力を感じています。


(c)Kotetsu Nakazato


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スクリプカリウ落合安奈◎1992年、埼玉県生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科首席卒業。現在、同大学大学院博士後期課程(彫刻)在籍。2020年10月24日から2021年2月7日まで、埼玉県立近代美術館にて個展を開催中。

インタビュー・構成=神吉 弘邦(Hirokuni Kanki)

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