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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

(c)Kotetsu Nakazato

東京藝術大学の油画専攻を首席で卒業、美術学部総代も務めたスクリプカリウ落合安奈。インスタレーション、絵画、写真、映像とさまざまな技法を駆使する現代美術作家だが、表現したいものは一貫している。行き交う呼吸、人の遺した想い、土地や血の中で受け継がれた歴史、他者である人間同士のつながり……。そんな「目に見えないもの」を作品のかたちにするのだ。

時間が幾重に重なったヴェール越しに瞬く光。古いモノクローム写真の人物たち。墨とアクリル絵具で描かれたサルの表情。国と国を遠く隔てる大洋が海岸に打ち寄せる波の音。寂しげな椅子が見まもる潮風にそよぐカーテン。作品の中の要素はすべて、揺らぎ、漂っている。

軽やかに、しかし骨太な感覚をもって迫る作品を生み出す、気鋭の作家にバックグラウンドを聞いた。



──いまの苗字は、ご両親の姓からなんですね。


私には日本とルーマニアという2つの祖国があります。でも、中学生から高校生までは「日本人」として生きたいと思っていて、ずっと「落合安奈」でやってきたんですね。ある時から、両方の国の人間として生きたいという想いが生まれました。

「スクリプカリウ」は、昔父から「村のバイオリン弾き」という意味だと説明されていました。大人になって自分で調べたら、ロシアやウクライナあたりにも多い名前でした。スクリプカが「バイオリン」で、リウが「専門家」といった意味らしいです。だから「バイオリンの専門家」となるようですね。

──再び2つの国の姓を名乗るようになったのは、藝大に進んだ頃ですね。作品制作にも結びついていますか。

はい。私自身が2つの国に根を下ろす方法を模索したことをきっかけに、「土地と人の結び付き」というテーマを持つようになりました。それで、国内外で土着の祭りだったり、信仰だったり、文化人類学的なフィールドワークを日本とルーマニアを中心に他の国でも行ってきました。最近はその延長として、霊長類学にも関心を持って取り組んでいます。

時間や距離、土地や民族を超えて、物事が触れ合い、地続きになる瞬間を紡ぐという作品を、写真や映像、絵画など、さまざまなメディアを使って、インスタレーションだったり、ときには平面作品だったり、その時々のテーマに合わせて作品にアウトプットして制作しています。


『Blessing beyond the borders ─越境する祝福─ 』。埼玉県立近代美術館で開催中の個展(2021年2月7日まで)と同タイトルの大型インスタレーション。土地の祭りのイメージを記録した、二重螺旋を描く10m四方の写真群。その内部を、鑑賞者は時間を上り降りしながら行き交う。

インタビュー・構成=神吉 弘邦(Hirokuni Kanki)

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