キャリア・教育

2020.11.04 08:30

レイ・イナモト、僕が30歳を過ぎて知った「20代に贈りたい言葉」 #30UNDER30


「昼はR/GAで、夜や休日はトロニックスタジオで働くという日々を過ごしながら、ニューヨークのThe art directors clubが主催するYoung Gunsという若手の登竜門的なコンペティションに応募したところ、運良く受賞することができました。

29歳のときだったので、ギリギリUnder30ですね。このコンペティションは実績のない無名な人たちを発掘するのがコンセプトの一つですが、権威のある団体のコンペティションで選ばれたことは大きな自信になりました」

ナイキのデジタル化戦略を進める黎明期に携わったイナモトは、デザインとテクノロジーを融合させる手法で高く評価される。やがて広告代理店「AKQA」へ移り、クリエイティブ部門の最高責任者を務める。

2016年にはNYで自身のオフィス「Inamoto&Co.」を設立。「ビジネスインベンションファーム」として新しいものを生み出すことをテーマに活躍を続け、2019年には東京にオフィスを開設した。

比べるのでなく、自分はどうなりたいか


「日本企業からの相談を受けることが多くなったことも理由のひとつですが、やはり海外にずっと身をおいていて、日本を元気にしたいということをずっと考えていました。イタリアには多くのファッションブランドがあり、フランスにも100年続いているようなメゾンがあり文化になっている。

では日本では? グローバルに名前が通用するブランドはなかなか思いつかない。日本にも素晴らしい文化がありものづくりの技術はあります。そこに世界がリスペクトするようなブランドが日本から生まれたら嬉しいなと思うんです。今後は、それを手助けするようなことをしたいと思っています」

そんなブランドを作っていくのは、きっと若い世代が中心になるはずだ。最後に、彼女ら、彼らが今後活躍するためのアドバイスを聞いた。

「イギリスのアートディレクターでポール・アーデンという人の言葉なのですが、“大切なのはいかに自分がすごいかということではなくて、自分がどれだけすごくなりたいかという気持ちだ”という言葉を贈りたいと思います。

この言葉は、30歳を過ぎてから知ったのですが、21歳とか22歳くらいのときに聞いておけばよかったなと思っています。世の中にはすごい人、すごい若者がたくさんいます。彼らと比べて今の自分のことを考えたら不安だらけになるでしょう。僕もそういう状態だったからこそ、この言葉の重みがよくわかるんです」


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レイ・イナモト◎ミシガン大学で美術とコンピューターサイエンスを専攻。Tanaka Noriyuki Activityを経て、1999年にR/GA入社。2004年からAKQAでグーグル、ナイキ、アウディといったグローバルブランドのデジタルマーケティング戦略を担当した。08年に同社のクリエイティブ最高責任者に就任。16年2月に「Inamoto & Co」(現I&CO)を設立。19年には東京にオフィスを開設。

文=青山 鼓 写真=木下智央

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