オードリー・タンも推薦 映画「わたしの青春、台湾」が占う台湾、香港、中国の未来

傅楡監督の『私たちの青春、台湾』は、10月31日より全国で順次公開


本作は、2018年、台湾映画のアカデミー賞と言われている金馬賞のドキュメンタリー部門の最優秀賞を受賞した。傅監督は、その際、次のようにコメントした。

「いつか台湾が『真の独立した存在』として認められることが、台湾人として最大の願いだ」


社会運動に身を投じる若者の姿を追う傅楡監督

この発言で、傅監督のフェイスブックは親中派からの嫌がらせで大炎上し、台湾では賛否をめぐって物議をかもした。台湾と中国の関係はその後も緊張の度合いを増し、翌2019年の金馬賞には中国大陸からの出品もなかった。

今回、映画公開にあたり、傅監督にインタビューしたが、受賞時のことを含めて、台湾と中国の関係について再度聞いてみた。

「現在もそうした気持ちに変わりはありません。中国と台湾という関係では、中国は台湾をきちんとした独立国と思ってくれるのがいちばんです。台湾は小さいので、誰も中国と戦争をしたいとは思っていない。お互いに情報化されて、台湾と中国がどちらも相互理解がなされていけばいいと思う。良い隣人として付き合えればいいのだが、(中国側の)家族だという言い方、そういう関係はご遠慮願いたい。心からの友達、いい友達になりたい。そして、私たちはあなたたちのものではないと伝えたい」

毅然とした態度でこう語る監督ではあるが、かつての自分は違ったという。

「以前の私は選挙で投票には行くが、それ以外は特に何もしていなかった。社会運動には興味はないという感じでした。自分が何かしたところで、世の中は変わらないと思っている、多くの人と一緒でした」

こう自身で語っているが、監督は今回のドキュメンタリーを撮影していくなかで、民主主義のために活動する2人と深く向き合い、自らの考えも変わり、大きく成長したという。

「ただ、この映画のなかで、2人を讃えたいというわけではありません。彼らの良いところも悪いところも知って欲しい。このドキュメンタリーを通じて台湾の今日の姿を知って欲しいのです」

実際に、2人の身の上に起る思いもよらない展開は、当初監督が考えていた作品にとっては致命的で、着地点さえ定まらなくなる。作中には、監督自身が混乱しているシーンも登場したりする。2人をインタビュー中に、涙を流し始める監督に、カメラが向けられる場面は実に衝撃的だ。
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文=小川善照

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