中学受験で「社会」を後回しにすると危険? 時事問題に「小学生新聞」は効くのか

「スタディアップ」代表 野村恵祐氏 著書


受験生を持つ保護者にとって「時事問題」で気になるのはなんといっても、2020年最大のトピックである「新型コロナ」関連だろう。

野村氏は、「2012年の入試時は、その前年の2011年に東日本大震災が起こりました。これは非常にネガティブな出来事だったため、入試問題として多くの中学で出題されるかどうか予想が割れていましたが、結局は『原子力発電所がなぜ、大きな問題となったか』など、多くの問題が出題されました。この前例に学べば、『新型コロナ』についても当然、準備しておく方がいいでしょう」と言う。

ちなみに、野村氏から以下、予想問題を出してもらったので、参考にしてほしい。

予想問題1:すべての人々の健康を増進し保護するため、互いに他の国々と協力する目的で設立された国際連合の機関をアルファベットで答えなさい。

(正解)WHO

予想問題2:その機関の本部はどこにあるか。国名を答えなさい。

(正解)スイス

予想問題3:政府が「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を実行するため、旅行・飲食・イベントなどの需要をうながす「Go To キャンペーン」が行われることになった。その中で、国内旅行の費用を補助する「Go To トラベル」はどこの省が担当しているか。

(正解)国土交通省

・時事問題対策、4、5年生の場合


結論からいえば、基本的には、時事問題を本格的に意識するのは6年生の後半からでまったく問題ない、という。なぜなら、時事問題の出題範囲は、6年生のときの1年間に起きた出来事だからだ。

しかも、ほとんどの中学の時事問題では、しっかりと直前期に対策しただけで十分完答できる問題になっているという。「ですから、4年生、5年生のうちは、安心して地理、歴史分野に取り組むようにしましょう」。

しかし4、5年生でも、偏差値60以上の難関中学、人気中学を明確に目指している場合は少し事情が違う。こういったごく一部の中学では、直前期の時事問題対策ではなかなか対応しきれない問題を出す場合があるという。「入試問題の中で、思考力や論理力を試される中学もありますので、4、5年生から時事問題に触れていくことをお勧めします」。

たとえば、首都圏の最難関中学の一つである慶應中等部では、今年2月にこんな問題が出題された。



地球温暖化をテーマにした上で、フランスのこの写真を見せ、この写真から地球温暖化対策に関するどういう取り組みが推察できるかを、40字以上80字以内で自由に答えさせる記述問題だ。

「模範解答としては、『移動の際には、自宅から目的地まで車で行かずに、駅や停留所近くの駐車場で車を停めて、そこから路面電車やバスに乗り換えることで、二酸化酸素の排出量を減らす取り組み』が考えられます。時事的な問題の中でも、毎年のように議題に上がる環境問題について、思考力を問うこういった問題が出題された場合は、『直前期の暗記』だけでは太刀打ちできない場合もあります」

しかも、文字数の多い記述問題は配点も高い。だから、この問題で得点できた子とできなかった子とでは、結局、社会のその数点が合否を分けてしまう場合もあるという。

こういった問題の対策として効果的な方法の一つが、早いうちから毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の各社が発行している「小学生新聞」を講読し始めることだという。地域の販売店によってサービスに違いはあるが、たとえば「1週間お試し」で配達してもらうなどして、読み比べてから決めると、新聞社による紙面の特色などもわかってよいそうだ。
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構成・文=石井節子

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