フードデリバリー業界では過去1年で巨額の買収が相次ぎ、デリバリーヒーローも複数の企業を傘下に収めている。「当局がこの業界の動きに神経を尖らせているのは明らかだ」と、同社CFOのエマニュエル・トマソンは話す。
「この分野は多くの国で重要度を増し、パンデミックを受けてさらに規模を拡大しいる。独禁法当局は、今後の取引への監視の目を強めるだろう」
デリバリーヒーローは昨年末に、韓国の同業の「Woowa」を40億ドル(約4170億円)で買収することで同意したが、韓国の公正取引委員会はこの取引をいまだに承認していない。
「当社は2017年に、ハングリーハウス(Hungry House)を英国のジャストイート(Just Eat)に売却したが、その際に英国の独禁法当局のCMAから承認を得るのに1年を要していた」とトムソンは話した。
デリバリーヒーローが10月28日に発表した第3四半期の売上は、7億7600万ユーロ(約950億円)で、同期間の注文件数は昨年の2倍近い3億6200万件に達していた。同社は今年の通年の売上予想を、27億ユーロから28億ユーロの範囲としている。
パンデミックが世界を襲う中で、同社は各国に拠点を広げている。10月初旬にイラクでのサービスを始動したデリバリーヒーローは、9月にスペインのバルセロナ本拠のグローボの南米事業を買収し、アルゼンチンやペルー、エクアドル、パナマ、コスタリカなどの国々にも進出した。
同社はさらに、子会社のフードパンダを日本市場でデビューさせたほか、中東の生鮮食品のマーケットプレイスInstaShopも傘下に収めている。
「昨年から当社は、ラオスやカンボジア、ミャンマー、そして日本などのアジア諸国に進出した。これは2〜3年前の我々の方向性とはやや異なる動きだ」とトマソンは述べた。
フードデリバリーの需要の高まりは、その他の企業の巨額買収によっても裏づけられている。ここ最近ではウーバーがポストメイツ(Postmates)を買収し、ジャストイートはグラブハブを買収した。
一方で、英国では昨年、アマゾンがデリバル−(Deliveroo)の少数株式を取得することで合意したが、英国のCMAは即座にこれを承認せず、15カ月の審査を経て今年8月にようやくゴーサインを出していた。