当初の買収契約について、内情に通じていたティファニーの関係者はフォーブスに対して6月、ティファニーがこの取引に関して問題を抱え、法務チームが最悪の事態に備えていることを明らかにしていた。
そして9月、LVMHがこの取引から手を引きたい意向であることが判明。米国との貿易摩擦を理由に政府から買収の延期を求められたため買収を断念するとして、仏外務省からの手紙を公開した。
だが、問題になっていたのは実際には、ティファニーが新型コロナウイルスのパンデミックのなかで配当の支払いに使った四半期当たり約7000万ドルの現金だ。LVMHの関係者は9月、フォーブスに対し、ティファニーは「文字通り現金を燃やしている」と指摘していた。
一方、ティファニーが米証券取引委員会に提出した書類によれば、同社の手元資金はこの時点でもおよそ11億ドル。同社関係者は、「LVMHは配当金の支払いをやめさせる“口実として”、パンデミックを利用している」と反論していた。配当金の支払いをやめさせれば、買収後にLVMHのバランスシートに記載される現金の額が増えるためだ。
その後、ティファニーは契約の履行を求めてLVMHを提訴。これに対してLVMHは、ティファニーを反訴。10月にはティファニーが反訴を受けて、「アルノーはあらゆる手段と機会を利用して、買収価格を可能な限り引き下げようとしている」と批判していた。
ティファニーの株主の承認を得れば、両社の合併は2021年初めに完了する見通しだ。