感染拡大防止策としてマスク着用の徹底措置が取られ、地下鉄ではマスクをしていないと50ドルの罰金が科せられる。深夜運行もなくなり、駅構内及び車内の掃除は徹底され、皮肉なことにニューヨークの地下鉄は、いままでになくきれいになってきている。バスの中にも無料でマスクが取り出せるボックスが設置されている。
これらの措置のためか、ニューヨークの中心部であるマンハッタンの感染者数は、比較的落ち着きを見せている。ニューヨーク州全体では、感染の多い地区は除き、映画館が定員の25%までの入場者数で再開が認められた。北部のスキーリゾートも11月6日から限定付きで再開される。また、寿司カウンターの営業も徐々に許可が出るようになってきた。
デリバリービジネスが活況
ニューヨーク市の失業率は、9月は14.1%で8月より1.9%下がった。2019年9月は3.7%であったので、この1年で10.4%、58万3800人の職が失われたことになる。10人に1人が失職した計算だ。
10月に入って、マンハッタンの交通量は増えて来ており、行き交う人の数も増えてきた。しかし、オフィス街にはあいかわらず人は少なく、どの企業でもテレワークは継続されているようだ。ブロードウェイも2021年5月末までは休演のままで、劇場閉鎖の継続が決まった。
観光名所であるタイムズスクエアにも旅行客らしき人の姿はまばら。大手のマリオットホテル、グランドセントラル駅前のハイアットホテルやマジソン街のマリオットホテルは既に閉鎖されている。1924年に建てられた歴史的なルーズベルトホテルも10月末での閉鎖が発表され、名残惜しさが募っている。
都市としても、経済学で言う「フロー」が止まったコロナ禍当初の状態から、やや回復しつつあるものの、「ストック(資産)」が傷つき、売却や閉鎖などの流れが加速してきている。
42丁目にあるニューヨーク市立図書館の入り口の左右に置かれているライオン像も、依然として大きなマスクをしており、首には大統領選の投票を呼び掛けるポスターをぶら下げている。今年は、毎年10月に行われる恒例のコロンバスパレード、ハロウィーンパレード、11月のニューヨークシティマラソンもなく、混沌としてきた大統領選の行方に、ニューヨーカーの耳目は集まっている。
地下鉄は徐々に乗客数が増え、ラッシュアワーを避けて乗っても、1.8mのソーシャルディスタンスを保っていることが難しい状況もあらわれてきている。