「脱皮できないヘビは死ぬ」 ニューヨークの飲食店と不動産市場は今

Cindy Ord / スタッフ/Getty Images


一方、治安は悪化し、アジア系の顔をしているだけで、街でいきなり殴られる事件も増えている。9月の発砲事件による逮捕者も、昨年の307人に比べて、今年は607人と3倍近くに増加し、1994年以来の数字となった。

3月からの新型コロナウイルス第1波による経済的影響も底を打ったかのように見えた9月だったが、10月4日、3月の最初のロックダウンから丁度200日目に、ブルックリン区とクイーンズ区の地域で14日平均の陽性率が高くなり、市が再度、一部地区をロックダウンすると発表した。郵便番号で指定された地域とその周辺が対象となる。

私の住んでいるクイーンズの地域もその対象周辺地域に指定され、新学期を迎えた学校もいったんは対面授業で開始されたが、1週間でオンライン授業のみに戻った。

9月末から 、レストランも収容可能人数の25%までを上限として、店内飲食が認められるようになったが、寒くなって来た10月でも、人は積極的には店内飲食はしない傾向が続く。昼夜のピーク時には、ウーバーイーツやグラブハブなどのデリバリーサイトを通じてピックアップにくる、デリバリーワーカーがひっきりなしに店を訪れる。

冬に向けては、これまで以上にテイクアウトに来る人よりもデリバリーが増えるはずなので、デリバリーをする側のビジネスは活況を呈していて、日本の出前文化がここニューヨークで蘇ったような感がある。

一方でニューヨーク市のレストランは、店内での飲食に限り、10月半ばの週末から、「Covid-19 Recovery Charge」というコロナ復興チャージを、10%加算できることになった。これには、レストランのサポートのためには仕方がないという声と、さらに客足を遠ざけることになると、賛否両論が入り混じっている。

飲食でデリバリーに上手くシフトしている例としては、日本の福岡からの出店で、ブルックリンのパークスロープ地区にあるラーメン店「Ramen Danbo」は、デリバリーだけで1日400杯以上の売り上げを記録し、ニューヨークの飲食業界でも話題になっている。

店の周辺に、デリバリーを利用する顧客層や年代層が多数存在していたという絶妙のロケーションと、コロナ禍の前までに1年以上も店を営業しており、すでにリピーターがついていたことが幸いしていたと言われている。

デリバリーに特化することで、どんどん作り置きしておけば、あとはピックアップを待つだけなので、店舗営業以上のスピードで注文が捌け、店内の客席数から考えると回転率は上がるだけでなく、店内でのサーバーや洗い場担当者も不要で、人件費が大幅に削減できるメリットがある。

客に来てもらうことを前提で店舗を大きくするスケールメリットとは逆の、デリバリーシフトでのメリットが発揮されており、テイクアウト業態の先に、ゴーストキッチンだけの完全デリバリーオンリーの業態が増えるというイメージも見えてくる。
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文=高橋愛一郎

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