訴状によると、ロビンソンは英国で物流をデジタル化する企業「ビーコン(Beacon)」を立ち上げるにあたり、カリフォルニア州本拠の「ヴァンガード・ロジスティクス・サービス」から機密情報を盗んだ疑いがあるという。
ロビンソンは2014年から2018年までウーバーのヨーロッパ、中東、アフリカでの事業を担当していた。ヴァンガードは、エジプトの億万長者モハメド・マンスールが率いる投資会社が所有する企業だ。
2018年にロビンソンが設立したデジタル貨物輸送プラットフォームのビーコンは、今年6月のシリーズAラウンドで、ジェフ・ベゾスと投資会社の8VCから1500万ドル(約15.6億円)を調達していた。同社のシードラウンドには、ウーバー創業者のトラビス・カラニックや元グーグルCEOのエリック・シュミットが出資していた。
訴状によると、ロビンソンはウーバー時代の同僚のドミトリー・イズマーロフと共にビーコンを立ち上げる前に、機密情報を盗む目的でヴァンガードの取締役を務めていたとされる。
ビーコンの広報担当は声明で、同社は「このような訴えを起こされたことに非常に驚いている」と述べ、この訴訟は「全くメリットがなく、間違った管轄区域に持ち込まれた申し立てだ」と付け加えた。
フォーブスはこの件で、ベゾスやシュミット、カラニック及び8VCにコメントを求めたが、期限までに回答は無かった。
「ロビンソンは詐欺によって会社を立ち上げ、その会社に警告信号を意味するビーコンという名前を付けた。彼と取引をする人は、警戒を怠らないようにしてもらいたい」と、ヴァンガードの広報担当者は声明で述べている。
ロビンソンは、ウーバーが社内のセクハラ問題や他社からの機密情報の持ち出しなど、一連の不祥事を起こした後の2017年末に、ウーバーを離れていた。彼は当時、ウーバーの機能不全との関連を指摘されていなかったが、カラニックが辞任した後に退社していた。
訴状では、ロビンソンが物流業界に関心を持ったのは、ウーバーがロジスティクス部門のUber Freightを立ち上げた後だったとされている。彼はそもそも、物流分野に深い知見を持っておらず、それ故にヴァンガードから機密を盗んだとされている。
今回の訴訟は、ウーバーとグーグルの自動運転部門ウェイモとの間で1年以上に渡って争われた、自動運転関連の企業秘密の窃盗問題に似ている。今年8月、元ウーバーのアンソニー・レヴァンドウスキーは、ウェイモから機密情報を持ち出した罪で有罪判決を受け、懲役18カ月を宣告されていた。