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WOTA代表取締役CEOの前田瑶介

グローバルリスクとして注目される水問題。世界30億人が手を洗うこともできずにいる現状を、前田瑶介率いるWOTAはテクノロジーで変えようとしている。

今年、「30 UNDER 30 JAPAN」に選出された彼の明快なビジョンとは。



2年前のある朝、プロサッカー選手の本田圭佑が、こんなツイートをした。

「大規模の断水 こういった問題を解決すべく、水浄化システムを開発している友人がいるので、水に困っていて大変な生活をしている現場に、そのシステムを届けてもらえないか話してみます」

2018年7月、西日本各地を未曽有の豪雨が襲った。多くの人命が失われ、都市のライフラインは分断。避難所は、泥にまみれた人であふれた。汚れた体は不快なだけではない。汚水の混じる水に浸かると、破傷風などにかかるリスクもある。そうした惨状を受けて発した本田のツイートだった。

この発信が次々にリツイートされるころ、“友人”はすでに現地入りしていた。東大発スタートアップであるWOTA(ウォータ)に、COOとしてジョインしていた前田瑶介だ。当時、同社が開発を進めていたのは、キャンピングカー用の水循環モジュールや、オフィスや家庭など屋内で自由にレイアウトを替えられる独立型シャワーブースであり、災害用ではなかった。しかし、現地の様子を見てじっとしていられなかったのは前田も同じ。試作中の屋内用シャワーブース5台をトラックに積み、被害の大きかった岡山県倉敷市に向かった。

WOTAの独立型シャワーブースは、水道インフラに依存しない。通常、100リットルの水で浴びられるシャワー回数は2回。しかし、排水をろ過して循環させることで約100回の利用が可能になる。このときは一緒に1.5トンの水を積んでいき、1500人がシャワーを浴びられる環境を提供した。

シャワーで泥や汗を洗い流し、笑顔になる住民たち。感情が解放されて泣き出す子どももいた。その様子を見て、前田はピボットを決めた。

「私たちのコア技術は、オンサイトの水再生処理です。最初はそれを日常やレジャーに利用して、生活を一段と快適なものにする付加価値路線を目指していました。しかし被災地に入って、国内にも水に関するクリティカルな課題が残っているとわかりました。この課題に対してインパクトを出していくべきだと考え、プロダクトの方向性を変えることにしました」

これまでの研究成果をもとに開発を重ね、翌年に発表したのが、可搬型の水循環システム「WOTA BOX(ウォータ・ボックス)」だ。

文=村上 啓 写真=平岩 享

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