3月5日に弁護団長の井戸謙一弁護士(66)の事務所で行われた打ち合わせでは、刑務所に申請する手順について井戸弁護士から提案があった。まずは、小出将則医師(59)から弁護団宛に「再審のために精神鑑定が必要」との意見書を提出し、その意見書を同封して弁護団が申請するという手順だ。すぐにその作成に取り掛かった。
(前回の記事:自殺未遂騒動から一転 「獄中鑑定」の実現に与えた意外な影響)
8月24日の出所まで半年を切っていた。獄中で鑑定し、出所前に記事化するには時間の余裕はあまりない。「すぐに書こう」。井戸弁護士の事務所を出た後、そう言って、小出君、角雄記記者(38)とJR南彦根駅近くのショッピングモールに移動し、パソコンで作業ができそうな喫茶コーナーに入った。遅めのランチのサンドイッチを食べながらすぐに取り掛かった。記者2人と元記者の3人で「こんな感じかなあ」「あれも付け加えておこうか」「そこは専門用語で書くならこう」などと言い合いながらワードで作成し、井戸弁護士にメールで送信。すぐに修正が入った形で返信されてきた。
「障害が疑われる明らかな所見」
さらに1往復ぐらいして、翌日できた意見書は以下の内容だった。小出医師から、事件の弁護団長である井戸弁護士に宛てたものだ。
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平成29年3月6日
意 見 書
殺人罪で和歌山刑務所に服役中の西山美香受刑者(37歳=当時)の再審請求事件について、意見を述べます。
私は、西山受刑者についての裁判資料、手紙等を検討し、両親の聞き取りを実施しました。その結果、彼女の発達、知能について障害が疑われる明らかな所見があるとの結論に至りました。この事実は、再審請求事件において非常に重大な新証拠となりうるため、正式な検査を速やかに実施すべきです。疑われる障害は、知能障害、発達障害(注意欠如症=ADHD、自閉スペクトラム症=ASD)、反応性愛着障害です。
私は今年2月26日、滋賀県彦根市の西山家において、受刑者の両親と面談し、成長過程のさまざまなことを聞き取り、また、母親を被験者とした発達検査を実施、さらに、小中学校時の通知表、作文類、また、本人が両親に当てた13年間に及ぶ手紙を分析し、ほぼ確定的に上記の障害を類推しています。