シノプス 代表取締役 南谷洋志

2020 Finalist Interview

シノプス 代表取締役 南谷洋志

#01

需要予測で
企業の業績を上向かせる

「欠品による販売機会の損失は企業の業績悪化に直結しますし、過剰な在庫は倒産にもつながる大きな問題といえます。需要予測の精度を高めることは、企業活動における最優先課題のひとつです。当社は独自開発の需要予測型自動発注システム『sinops』により、小売・卸売・製造業といった在庫を抱える企業の業績を劇的に向上させてきました」

そう話すのは、シノプスの代表取締役・南谷洋志。自動発注システム「sinops」は需要予測の精度が大いに評価され、現在、国内の小売業界において約5,000店舗に導入済みだという。金額ベースでいうと日本の小売業上位300社(百貨店とコンビニを除く)の総売上の内、14.7%を「sinops」の導入企業が占めている。

例えば、数多くの品目を取り扱うスーパーにおいて、日々の需要予測を立てるのは至難の技だ。たとえ、ベテランといえども現場担当者の経験と勘に頼るだけでは心許ない。ましてや、経験の浅いパート従業員に発注業務を担わせている例もある。また、単純に売れた個数のみを自動発注するシステムや、いま・どこに・いくつあるという情報だけが表示される在庫管理システムでは、真に最適化され、信頼たり得る需要予測および発注にはつながらない。

企業・消費者・地球環境の
三方よしを実現

「sinops」による需要予測と自動発注が便益をもたらすのは、在庫を抱える企業だけではない。実際に商品を購入する消費者にとっても有益だ。

「今年の9月に日本気象協会と連携し、台風10号が九州・四国に接近した前後の需要の変化を予測する実証実験を行いました。こうした有事に特殊な需要変動が見られる食パンを対象に、台風予報データを組み込んだ自動発注システムを使って、買い溜め需要への対応と効果を検証したのです。結果として、実験店舗では平均で売上金額が1.7倍、販売数が1.6倍になりました」

需要予測型自動発注システム「sinops」は消味期限が短い品目の廃棄=食品ロスを減らし、輸送にかかるエネルギーや温室効果ガスの削減にも寄与する。企業にとっても、消費者にとっても、地球にとっても優しいシステムといえる。食品のみならず、医薬品、雑貨、スポーツ用品、家電、アパレルなどの業界にも拡がり、各現場で無駄や環境負荷の低減効果を実証している。

「当社は、『在庫に関わる“人”、“もの”、“金”、“時間”、“情報”を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献する』という理念を掲げ、『世界中の無駄を10%削減する』ことをビジョンにしています」

在庫の最適化は、商品の数量を適正にして収益を上げることのみを意味しない。この社会からあらゆる無駄や非生産性をなくしていくイグナイター(点火装置)となり得るのだ。

判断に迷ったら、
常に面白いと思えるほうへ

大阪市で生まれた南谷の実家は、果物屋を営んでいた。小学2年生のときには、ひとりで店番も経験し、稼ぐことの大変さやお金の有り難さを学んでいたという。大学卒業後は電子部品を扱う商社、さらには電子部品メーカーでキャリアを積み、33歳になる直前(1987年)に念願だった起業を果たした。得意先の画像処理ソフトウェア企業の社長に見込まれ、注文を約束されたのをきっかけにして、画像処理装置の生産・販売事業を始めたのだ。

他人に見込まれる才覚を有し、努力を怠らない南谷の性分は、他人の困りごとを見過ごすことができなかった。sinops開発のきっかけとなったのも、あるお客様との出会いだった。

「たったひとりで5,000もの品番を管理している自転車部品卸売業のお客様がいました。何とかしたいと思い立って在庫管理ソフトを探したのですが、どのソフトも在庫の数量を測るのみで最適化する機能がなかったのです。これから先の需要を予測して、過不足を判断するソフトは見つかりませんでした。『それならば、自分たちでつくるしかない』ということで、需要を予測する自動発注システムの開発に取り組んだのです」

誰かの役に立ちたいという純粋な思いが大きなビジネスへと成長したいま、
改めて南谷にアントレプレナーとしての熱源は何かと尋ねてみた。

「これまでに右か左かの判断に迷った場面は幾度もありましたが、その際には儲かるかどうかよりも面白いと思えるほうに進むようにしてきました。儲かることが面白いと考える起業家もいるでしょうが、私のなかでの“面白い”の定義は、『ユニークなことをして、みんなが感動すること』です。人がやっていないことで大きな成果を上げて、誰かが喜んでくれるのを見届けるのが好きなのです。それを続けていれば、結果として儲かるのではないでしょうか」

自動発注システムにおいて、日配と呼ばれる最も難易度の高いカテゴリー(牛乳やチーズ、納豆など賞味期限の短い食品)で需要予測を提供できるのは、「sinops」だけだという。需要予測の難しさ、さらには予測が外れた際のリスクを考えた他社には挑戦できなかったのだ。また、今年のコロナ禍において早期の段階から「sinops」はクラウドでのシステム提供を開始している。これも業界では初めての挑戦である。南谷が考える“面白い”は、今後も大いなる感動を巻き起こしていくに違いない。

株式会社 シノプス

本社/大阪府大阪市北区梅田一丁目12番12号 東京建物梅田ビル5階
TEL/06-6341-1225(代表) 
URL/https://www.sinops.jp/
従業員数/74名(2020年6月時点)

南谷洋志◎1954年、大阪府生まれ。関西大学工学部管理工学科卒。「在庫管理とそのシミュレーション」が卒論のテーマだった。78年、大都商事(現 東証一部のダイトロン)に営業職で入社。84年、須磨電子産業に転職。87年、リンクを創業。2018年、東証マザーズに上場。19年、社名をシノプスに変更。

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text by Kiyoto Kuniryo photograph by Masahiro Miki edit by Akio Takashiro