代わりに行ったのはホスト自身がプログラムの内容を決める自主提案型のワークショップです。
参加者同士で運営の課題や解決法をシェアしてもらうとともに、地域との関係づくりで心がけていることや、ゲストにどう接しているかも共有してもらいました。
サポート方法を変えた当初は、参加者から「せっかくここまで来たのに何も教えてくれないじゃないか」とお叱りを受けることもありました。けれど、ワークショップを続けるうちに参加者同士が繋がって、県をまたいでホストの交流が生まれていった。次第にホスト達は自発的にノウハウを共有して学び始め、周辺住民と関係性を育んでくれるようになりました。
これらの経験を経て私は多くのことを学びました。私たちが一方的に何かを伝えるよりも、ホストの自主性に任せた方がインパクトが大きいこともある。問いを与えれば、ホストの人たちが潜在的に持っている答えを引き出すことができます。
今だから言えることですが、ホスト自身に「私たちはこうしたい」と考え、行動してもらうことが、自主性を育むために必要なプロセスだったのだと思います。
80歳のおばあちゃんと社会を再接続した話を、少しだけ
様々な苦労もありましたが、それを補ってなお余りあるほど、コミュニティコーディネーターは楽しく、やりがいがある仕事です。
Airbnbの登録物件は全国各地に存在しています。僕はもともと旅行が好きなので、仕事を通じて全国各地に行けることが魅力的でした。また、地域やホストによって課題は様々なので、毎回アプローチが異なります。今では入社して4年になりますが、本当に業務に飽きることはありません。
でもそれらは、この仕事の魅力のごく一部です。僕がこの仕事を続けているのは、ホストの自己実現をサポートできるから。
ホストにはそれぞれホームシェアを始める理由があります。
「旅行が好きだけれど忙しくて出かけられない。だから、家に旅行者を招いて旅の雰囲気を味わいたい」「生まれ育った地域が過疎化で寂くなっている。だからホームシェアで人を呼び込みたい」など様々な運営への思いがあります。
特に印象深かったのが、福岡県のおばあちゃんでした。彼女は80代で、建築家を引退し、現在は畑仕事をしながら世界中のゲストに部屋を貸しています。
ホームシェアについて、彼女はこう話してくれました。
「自分のペースで運営できるし、使っていなかった部屋に役目を与えられるでしょ。お客さんを迎える前は家の周囲を掃除するから、道も綺麗になるのよ。部屋を貸すことが自分やお客さんのためになるし、少しだけ地域のためにもなる。私も誰かの役に立てていると実感できるの」
定年を迎えると、地域や社会と関わる手段は減ってしまいます。けれど、社会と接点をもつことで充実した生活を送ることができる。
様々なホストの思いに寄り添い、自己実現の手助けをさせてもらえるこの仕事に、大きなやりがいを感じています。