心細かったNY生活。心を救ってくれた“ホームシェア”
少しだけ時間を巻き戻して、Airbnbとの出会いについてお話しさせてください。
ニューヨークにいたころの僕はお金に余裕がなく、窓がない地下の部屋に暮らしていたんですね。部屋には全く光が射さないので気が滅入る。気分転換のためにAirbnbを利用して、ゲストとして近所の家に泊まりに行くようになりました。最初に泊まった先のホストはとてもあたたかい人で、印象に残っています。
一度泊まりに行ったら街ですれ違うたびに挨拶をしてくれて、頻繁に食事へ誘ってくれた。そのほかのホストも親切に接してくれましたし、知り合いが増えていくなかで、僕は徐々にニューヨークに馴染むことができました。
それ以来、僕はAirbnbのファンになり、旅行の計画がなくてもサイトを訪れるようになりました。
帰国後も「全国を巡ろう」と思い立ち、旅行の計画を立てながらサイトを見ていたら、たまたま人材募集のページに行き着いた。当時は受かると思っていなかったけれど、大好きなサービスの運営に携わりたいと思い応募したところ、運良く採用が決まりました。
あえて、成功例を“押し付けない”。すると、地域独自のコミュニティが育つ
話を戻して、コミュニティコーディネーターの仕事についてもう少し掘り下げましょう。
ホストが円滑にホームシェアを運営するためには、ホスト自身に地域へ働きかけてもらわなければいけません。それがこの仕事のやりがいであり、もっとも難しい点なのです。
僕たちがどれだけサポートしても、宿の運営方針を決めるのはホストたちです。ホームシェアを運営する上で必要な細かな業務や、地域との関わり方は僕たちにはコントロールできません。地域に宿があることが地元のメリットにならなければ、周辺住民や大家さんから「ホームシェア業を止めてください」とお願いされてしまうかもしれない。
だからこそ、ホストの自主性が求められるのです。コミュニティコーディネーターを務めてからは、ホストの自主性を育む試みを繰り返しました。
入社当時の自分を振り返って「失敗したな」と思うのが、ホストに「こうあるべき」を強制したことです。
僕たちは活動の一環として、地域との関わり方などを教える勉強会を開催することがあります。昔はお手本、いわゆる成功事例を示すことに集中してしまい、コミュニケーションが一方通行になってしまうことがありました。その結果、ホストを受け身にしてしまったのです。
だから、ある時期から勉強会では何もしないようにしました。