同紙によると、計画はテレビやラジオ、オンライン、ポッドキャストの広告を通じて「絶望をくじき、希望を湧き起こす」ことを目的に、公金2億5000万ドル(約260億円)を投じて実施する予定だった。保健福祉省のマイケル・カプート次官補(現在は病気で休職中)が発案したという。
しかし野党・民主党の下院議員らから、純粋に公衆衛生の促進を目的としたものではなく、政治的な動機に基づくものだと批判され、暗礁に乗り上げた。計画は現在、同省によって審査されているという。
ホワイトハウスのブライアン・モーゲンスターン報道官はウォールストリート・ジャーナルに、ドナルド・トランプ大統領はサンタクロースを演じる人らを活用する案については知らされていなかったとしている。
この計画で一足先にワクチンを接種してもらえる予定だったのは、サンタクロースのほか、ミセス・クロース、エルフを演じる人たち。「本物あごひげサンタ友愛会」のエリック・アーウィン会長は「わたしたちにとっては2020年のクリスマスで最大の希望だったのですけれど、どうやら実現しなくなってしまったようです」と残念がっている。
新型コロナウイルスの感染者は全米で急増しており、23日には1日の感染者が8万5000人超と過去最多を更新した。ワクチンが年内に配布できるようになる兆しはなく、国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、ワクチンがない状況で感染拡大に対処するには、全米規模でマスク着用を義務化する必要があるかもしれないとの見解を示している。
「ワープ・スピード作戦」と呼ばれるトランプ政権のワクチン開発の取り組みは、とくにトランプがワクチンは11月3日の大統領選前に承認されると選挙イベントで繰り返し約束していることから、科学的なプロセスに政治が介入していると批判を浴びている。
ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事によると、同州は新型コロナウイルスのワクチンを州内での提供に先だって審査するため、独立した専門家委員会を設置する。トランプ政権のもとでは疾病対策センター(CDC)や食品医薬品局(FDA)は「信頼性」に欠けるとクオモは述べている。