ビジネス

2020.10.31

廃棄物を資源にアップデート タイから生まれるサーキュラーエコノミーの波

moreloop(モア・ループ)

2020年、タイ政府はサーキュラーエコノミーを官民連携で推進する「BCG(Bio Circular Green)経済」を導入した。各産業で資源を有効活用し、持続可能な社会を実施する経済モデルだ。今後5年間で、BCG関連産業のタイGDPを3.4兆バーツ(約21%)から4.4兆バーツ(約24%)まで増加させ、350万人の雇用創出を目指す。

こういった状況が追い風となり、いま注目を集めるスタートアップがある。タイの縫製工場で大量に廃棄される高品質な布をキュレーションし、安価に販売する「moreloop(モア・ループ)」だ。18年に創業後、タイ国内の大企業や国際機関からも発注を受け成長を続けている。20年8月には、オランダのサーキュラーエコノミーコンサルタントRick Passenier(リック・パッセニア)氏と協力し「moreloop europe」も設立。テストマーケティングとして、余り布から制作したマスクを販売している。

創業者は、金融機関でリスクマネジメントを担当してきたアモポール・ユーヴァンダナ(Amorpol Huvanandana)氏と、タイ地元工場の二代目オーナー、アム・ヴィロドゥチャイヤン(Amm Virodchaiyan)氏。異業種で活躍してきたふたりは音楽フェスをきっかけに知り合い、仲を深めるにつれて既存のリニア型経済に対する課題意識が共通していることに気づく。

幼い頃から環境問題に強い関心があったアモポール氏は、書籍の『Resource Revolution(邦題:リソース・レボリューションの衝撃 100年に1度のビジネスチャンス)』を読んで「危機」をチャンスに変える方法の模索を始める。一方、アム氏は工場で発生する大量の余剰布に悩みを持っていた。1枚のTシャツを作るだけでも、大量の余布が発生する。タイでは年間35万トンもの余剰布があり、これはTシャツ約7億枚に相当する。これまで廃棄物として扱われていた余布を「資源」としてアップサイクルし販売できないかと、二人はmoreloopを創業した。

事業成長を支える2つのビジネスモデル


moreloopのビジネスモデルは2つ。

ひとつは、キュレーションした高品質な布を安価に販売するオンラインプラットフォーム事業。サイト上には購入可能な布の一覧と詳細情報を掲載。タイ国内約70工場から集めた余り生地が並ぶ。中小企業のオーナーや個人のデザイナーは、このサイトを通して生地を購入することができる。


moreloopのインスタグラムアカウント。アート作品のように生地を掲載している。

moreloopのインスタグラムアカウントでは生地をアート作品のようにポスト。これは、生地に限らずあらゆる業界や産業で、「廃棄物」と扱われるものが「資源」に変わる可能性があることを表している。
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文=佐藤まり子

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