ビジネス

2020.10.31

廃棄物を資源にアップデート タイから生まれるサーキュラーエコノミーの波

moreloop(モア・ループ)


もうひとつの事業は、キュレーションした生地を使ったオリジナル製品の企画・販売だ。冒頭で紹介したマスクもmoreloopのオリジナル商品の一つで、リサイクルポリエステルからつくられている。防水加工を施し、衛生面も考慮して持ち運び用のバッグも付属。マスクの右上にはmoreloopのロゴとともに限定デザインでレインボープライドのマークもあしらわれている。



他にも、企業のノベルティとしてTシャツやトートバッグも制作。UN(国際連合)のノベルティグッズや、タイのEU(欧州連合)とコラボレーションしてマスクも制作するなど、オリジナルグッズ制作事業は年々拡大。今後は地元のデザイナーとコラボレーションしてさらに力を入れていく予定だ。

創業わずか2年。タイ国内で成功の理由は


もともと、タイ国内では特にアパレル業界でのサーキュラーエコノミーに対する意識が高いわけではなかったが、政府がBCG経済モデルの採用を発表するなど近年は積極的に循環型社会への移行を目指している。他国からの知見も取り入れており、政府主導でサーキュラーエコノミーに関するセッションや研修も実施。アモポール氏がそのセッションに参加したときにリック氏と出会い、ヨーロッパでの展開につながった。

タイでは、「循環型社会」が一種のバズワードになっている。Facebookなどのソーシャルメディアで投稿した際の人々の反応も良く、多くの人が投稿をシェアしてくれるそうだ。

moreloopは、その中でアパレル業界が抱える問題の一つ、生地の余剰在庫に注目した。ただ生地・製品を販売するだけではなく、国内の啓蒙も重視し、どれだけの廃棄物が循環したかを計測。23年までに1000トンの循環を目指している。

アイデアを広めるために、パートナーを歓迎


Moreloopの最終的な目標は、廃棄布の根絶だ。「私たちだけでこの目標を達成することはできない。だから、私たちの事業アイデアにインスパイアされる人が増えることを願っています」とアモポール氏。

オランダでの事業展開も、自分たちの思想やサービスを広めるための方法のひとつだ。現在はタイ・オランダ両国で、パートナーを積極的に募集している。

大量生産・大量消費のモデルに限界がきていることはわかっていても、なかなか実践は難しい。大きな負担をかけず、サーキュラーエコノミーやソーシャルグッドなことについて普段から意識できることは何か訪ねた。

「まずはマインドセットを変えることが重要だと思います。僕自身、リニア型の経済からサーキュラー・エコノミーにマインドセットを変えたことで、モノの選び方や見方、消費の仕方が変わりました。マインドセットが変われば視点が変わります。あなたが普段の生活で触れるあらゆるものが、いったいどこから来るのか想像してみてください。Tシャツ1枚とっても、様々な過程を辿ってあなたのもとに届いています」(アモポール氏)

連載:オランダで芽吹く未来の種
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文=佐藤まり子

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