メディアとアプリから社会が変わる。 合田文が目指す未来 #30UNDER30

株式会社TIEWA CEO 合田文

「30 UNDER 30 JAPAN 2020」受賞者のひとり、TIEWAの合田文。彼女は、SNSで性のあり方やフェミニズム、ダイバーシティについて漫画で紹介するウェブメディア「パレットーク」の編集長を務める。誰もが「(自分)らしく生きる」ための新しい選択肢を持てるような社会をつくりたいと、2019年8月にTIEWAを設立した。

同社は異性同士や恋愛関係に限らない、安全でクリーンな出会いを提供するマッチングアプリ「AMBIRD」も運営。現時点で約15万人もの利用者がいる人気コンテンツとなっている。

そんな、いま注目されている企業の若きCEOは、どのような経緯で起業にいたり、どんな未来を描いているのだろうか。



誰もが興味を持てるようなメディア


──TIEWAを創業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

もとをたどれば、前職のCEOの「週5日つらい顔をして働いている人が、みんないきいきと働けたらチームの成績がよくなる。チームの成績がよくなれば会社の業績がよくなる。そういう会社が増えたら、社会が元気になる」という言葉に感銘を受けたこと。これが、起業の原点だったと思います。

このことがきっかけで、一人ひとりが「らしく生きる」ためには自己責任ではなく、社会やシステムごと変わっていく必要があると気づきました。

その後、セクシュアリティやジェンダーに関する新事業を計画していた会社で、事業責任者という立場で働くことになりました。

最初は「LGBTQ+の人のためのメディアをつくろう」と取り組んでいたのですが、社会やシステムを変えていくためには、当事者だけではなく「関心のないまま生きてくることができた人」にこそ読んでもらわなきゃ、とメディアを大きく方向転換したんです。

その会社は解散してしまったのですが、事業部だけはそのまま残すことになり、それが2019年8月に設立したTIEWAにつながりました。

──元の会社での事業がTIEWAで活かされているのですね。ですが、自分は当事者ではないと考えている人に、セクシュアリティやジェンダーの問題について関心を持ってもらうことって、難しいですよね。

そうですね。セクシュアリティやジェンダーの問題は身近であるにもかかわらず、自分ごととして捉えている人はまだまだ少ない。生きていく中で「当たり前」だと思いこまされてきた「男性/女性は、こうあるべき」という考え方を今一度見つめ直すことで、自分や身近な人の持つ選択肢も大きく広がっていくと私は思っています。

「男性か女性か」、「白か黒か」だけではなく、「世界はもっと複雑で曖昧で、誰もがそのグラデーションの一部だ」というメッセージをもっと多くの人に届けて、対話を生むきっかけを広げたいと思っています。ウェブメディアの「パレットーク」という名前も、こうした意味を込めて「パレット」と「トーク」を掛け合わせてつくったものなんです。
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文=長谷川寧々 写真=映美

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