英プレミアリーグ2季目に挑む日本の「10番」 南野拓実が直面するジレンマ

Michael Regan - UEFA/Getty Images


聳え立つFWトリオの高い壁


プレミアリーグで結果を残したときにこそ、初めて周囲から認められる。自らにこう言い聞かせている南野は、同時に目の前に聳え立っている、高く、険しい壁の存在も認めている。

在籍6シーズン目のブラジル代表ロベルト・フィルミーノ。5シーズン目のセネガル代表サディオ・マネ。そして、4シーズン目のエジプト代表モハメド・サラー。フィルミーノを中央に左にマネ、右にサラーが配置される前述のFWトリオ、フロントスリーはヨーロッパ最強の攻撃力で対戦相手を恐れさせてきた。

特にサラーは、2017-18シーズンに32ゴール、2018-19シーズンには22ゴールをあげて、連続得点王を獲得。マネも2018-19シーズンの得点王をサラーと分け合い、左右の2人を生かしながら自らもゴールを狙うフィルミーノとともに、2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグを制覇、そして昨シーズンのプレミアリーグ制覇と、リヴァプールにビッグタイトルをもたらす原動力となった。

当然ながら、リヴァプールの指揮を執って6シーズン目になる、ドイツ出身のユルゲン・クロップ監督から寄せられている信頼も厚い。今シーズンのプレミアリーグではフィルミーノとサラーが全6試合に先発し、特にサラーはすべてでフル出場。マネもPCR検査で新型コロナウイルス感染の陽性判定が出た影響で欠場したアストン・ヴィラとの第4節を除いて、すべての試合で先発している。

第2節以降ではすべて後半途中でベンチへ退くなど、イギリスのメディアからコンディションに疑問符がつけられているフィルミーノは、そのうちのチェルシーとの第2節、アーセナルとの第3節、シェフィールド・ユナイテッドとの第6節で南野と交代をしている。南野自身をして「自分とポジションも近い」と言わしめる29歳のストライカーは、南野にはどのように映っているのか。

「前を向いてからワイドの2人、マネやサラーにボールを預けて、もう一度相手ゴールに向かっていくフィルミーノの動きは、僕も割と得意にしているプレー。相手のディフェンスラインへ向かって顔を出すときの動き方であるとか、再びボールにタッチする前に、例えば顔をちょっと左右に振るとか、相手のディフェンスを読みにくくする動きを意識して見るようにしています」

身長174cm体重68kgの南野に対して、フィルミーノは180cm76kgだが、マネは175cm69kg、サラーは175cm71kgと、身体のサイズとしては近いのだが、決定的に違う面があると南野は言う。

「身長は僕とほとんど変わらないなかで、身体的には彼らのほうがごつくて、身長が190cmある相手のディフェンダーに対してもボールをキープできる強さがある。さらにボールを置く位置であるとか、複数の選択肢をもったうえでファーストタッチする巧さも加えることで、相手が飛び込みづらくなっている。そういった部分というのは、僕にとっても参考になるプレーだと思っています」

フィルミーノ、マネ、サラーがヨーロッパ最強トリオと呼ばれる理由を、練習で、そして公式戦のピッチで目の当たりにできる日々は、成長を遂げていくうえで南野にとっては最高の環境になる。だからこそ、自らの目で学び取った成果を、クロップ監督以下の首脳陣にアピールできない自分にジレンマを募らせている。

結果がすべての世界を象徴するかのように、開幕直後にリヴァプールに加入した23歳のポルトガル代表FWエィオゴ・ジョッタがチーム内での序列を上げてきた。

直近のリーグ戦だったシェフィールド・ユナイテッド戦では、クロップ監督は、システムをそれまでの[4-3-3]から、サラーを1トップに据えた[4-2-3-1]に変更。2列目には左からマネ、フィルミーノ、そして南野ではなく新加入のジョッタが配置された。
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文=藤江直人

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