英プレミアリーグ2季目に挑む日本の「10番」 南野拓実が直面するジレンマ

Michael Regan - UEFA/Getty Images

森保ジャパンで最多となる11ゴールをあげている日本代表のエース南野拓実。今年の元日、ヨーロッパを代表するビッグクラブのひとつ、英プレミアリーグの名門リヴァプールFCに移籍したが、異国の名門クラブでの苦闘が続いている。

ヨーロッパ最強を誇るリヴァプールのFWトリオが活躍する陰で、今シーズンのプレミアリーグではゴールどころか、先発のチャンスすらめぐってこない。コロナ禍のなかで活動を再開させた日本代表で、エースの証である「10番」を背負った25歳は、胸中にどのような思いを募らせているのか。

森保ジャパンがカメルーン、コートジボワール両代表と対戦した、10月のオランダ遠征で残した言葉の数々から、南野の現在地を追った。

ままならない先発での出場


自らが求め続けていた最高の環境が目の前に広がっている。しかし、毎日のように深めているその手応えを、数字という結果で表すチャンスをなかなか得られない。南野拓実は、いまジレンマの真っ只中にいる。

オーストリアの強豪レッドブル・ザルツブルクから、今年1月1日にヨーロッパを代表する名門クラブのひとつ、リヴァプールFCへと移籍した。約半年後には、日本人選手としては4人目となる、英プレミアリーグでの優勝も経験した。それでも胸中に抱く思いを問われると、南野は決まって同じ言葉を絞り出す。

「正直、いまの自分の立場といったものに、まったく満足していない」

リヴァプールが頂点に立った昨シーズンは、途中加入だったこともあって控えの立場に甘んじた。リーグ戦と国内外のカップ戦とを合わせて14試合に出場するも、無得点のまま終わった。しかし、9月に開幕、準備期間を経て臨んだ今シーズンは、言い訳ができない状況にあると、自分自身に言い聞かせてきた。

実際、前年のプレミアリーグ王者とFAカップ覇者が対決する、シーズン開幕に開催される恒例のコミュニティ・シールドでは、強豪アーセナルから同点ゴールをゲット。試合そのものはPK戦で敗れはしたものの、加入15試合目で決めた新天地における待望の初ゴールで存在感をアピールした。

「今シーズンの最初の公式戦であるコミュニティ・シールドでゴールできたことは、自分のなかでも自信になりました。昨シーズンに比べて少しずつですけど、積み重ねてきたものや、周りからの信頼というものを得られてきているのかなと感じています」

自身がこう振り返るその勢いを、南野はプレミアリーグ、FAカップと並ぶイングランド国内公式戦であるカラバオ・カップへも繋げた。3部リーグに相当するフットボールリーグ1に所属する、リンカーン・シティとの3回戦で先発フル出場。2ゴールをあげてチームを勝利に導いたのだ。

しかし、肝心のプレミアリーグの舞台では、先発のチャンスがめぐってこない。第6節を終えた段階で途中出場の4試合にとどまり、リーズ・ユナイテッドを4-3で下した開幕節と宿敵エバートンと2-2で引き分けた第5節は、リザーブのまま試合終了を告げるホイッスルを聞いている。

「移籍してから高いレベルの選手たちと、日々の練習から一緒にプレーしていますけど、試合で結果を出してこそ成長を実感できると思っている。リヴァプールでレベルアップしているのかと問われると、いまの時点ではわからない。いまの自分に足りないのは、何よりも結果なので」
次ページ > 聳え立つFWトリオの高い壁

文=藤江直人

ForbesBrandVoice

人気記事