挑戦する人と挑戦する企業をつなぐ、Forbes JAPAN 初の採用ブランディング

「高専の卒業生が持つ“無限大の可能性”を実感したのは、ここ数年のことです。もっと早くに気づいて採用に力を入れていれば、これまで取り組んできた当社のさまざまな施策が半分の時間で成し遂げられたかもしれない」

サンケイエンジニアリング代表の笠原久芳は、唇を噛みながら、こう吐露した。

同社は横浜市に本社・技術センターを構える、1975年創業の電子部品メーカー。

これまで技術職には大卒、大学院卒の社員を迎え入れてきたが、思いがけず二人の高専卒業生が中途入社したことで、笠原の高専に対する概念はがらりと変わった。

「彼らの共通点は、ものづくりをこよなく愛し、かつ実践的であること。かと言って『自分の専攻は〇〇なので、ちょっと......』などと変にカテゴライズせずに、純粋な好奇心のみで目的へと立ち向かう。幅広い題材を投げかけやすい、稀有な存在なんです」(笠原)

高専生を新卒で採用したい、そう思い立った時に知人を介して知り合ったのが、高専キャリア教育研究所(以下、高専キャリア)代表・菅野流飛だった。

高専卒業生の力量に、未来への希望が湧いた


高専キャリアとの取り組みを紹介する前に、まずサンケイエンジニアリングの事業について触れておこう。

同社が製造しているのは、電子部品や自動車用電装部品、半導体等の特性評価・性能試験時に通電するために用いる部品・コンタクトプローブ(導電接触ピン)。横浜市のほか、カンボジア・プノンペンに生産拠点を持ち、国内外の企業と活発な取引を行なっている。

創業から45年、中堅メーカーとして、緩やかだが確実な成長を遂げてきたサンケイエンジニアリング。

しかし、国内の中小製造業全体に目を向けると、様々な面において苦戦している企業が多い。その数は年々減少傾向にあり、とりわけ資本金・従業員規模が小さな企業ほど減少が著しい。

常日頃から中小製造業の未来を憂いていた笠原。しかし、高専卒業生の力量に触れたことで、業界再生に向け、希望の光が差したと笠原は話す。

「菅野さんとは採用を目的にお会いしたんですが、その前に1度、現役高専生の実力をこの目で確かめたくて、2020年3月に開催された高専キャリア主催のビジコンのスポンサーになったんです。コンテスト当日は、全日程に同席し、至近距離で彼らの動向を見守りましたが、とてつもない“知と技のパワー”に圧倒されっぱなしの3日間でしたね。スタート時はイマイチな企画であっても、変化をいとわず貪欲にブラッシュアップを重ねていく姿には恐れ入りました」(笠原)

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高専生の実力を確信した笠原。

とはいえ、新卒採用には綿密な戦略づくりが必須であり、即踏み切ることは難しい。

笠原は、高専キャリアが展開しているスタートアップスタジオ事業を通じて、高専生の力を借りることにした。

このスタートアップ事業の最大の特徴は、大手メーカーのPoCサポートのほか、様々なスタートアップ企業の事業開発支援などの各案件に現役高専生がアルバイトとして携わっていること。

授業では取り扱わない最新技術や、実際の開発の現場で運用されている業務フローやコラボレーション手法などに触れてもらうことで、多様な業種・職種への理解促進と、実践的な人材の育成を目指している。

サンケイエンジニアリングのプロジェクトでは、2020年1月より、技術センターのDX化に着手。10月現在、その前段階である、工程の「見える化」に注力している。

「高専キャリアが世に存在するコンサルティング会社と異なるのは、システムをパッケージにしてただ売るのではなく、こちら側に納得感を持たせながら伴走してくれる点。無いものを創ることに柔軟に対応してくれる点。変革に向け一歩一歩、前に進んでいる実感が持てています」(笠原)

このDXの取り組み。実は、笠原の「中小製造業の未来を変えたい=日本の中小製造業を世界の中核へ」という想いを実現するためのプロジェクトでもあった。

DXで、業界内に“拡大と連携”の発想を


「日本の中小製造業の多くは、技術を磨き、その分野のスペシャリストです。全盛期はそれでよかったのですが、グローバル化と変化の激しい今、現状維持路線では生き残ることは難しい。私は業界内に“変化”と“連携”の発想を広めていきたいんです」(笠原)

2014年にサンケイエンジニアリングがカンボジア・プノンペンに生産拠点を開設したのも、この“変化と連携”が狙いだった。単独では海外進出が困難な中小企業をサポートするべく、OEM生産を請け負う腹積もりなのだ。

しかし、ここまで準備を周到にしておきながら、なかなか実行に移すことはできなかった笠原。しっかりと受け止め、賛同してくれる企業があるかどうか、疑問をぬぐえなかったからだ。

「しかし、事業承継の問題が年々深刻化するのを黙って見ているわけにもいかない。『今は必要とされなくても、10年後にはきっとニーズがある』と腹をくくり、2019年にスタート宣言をしたんです。それからほどなくして、菅野さんと出会い、最初の一歩を踏み出すことができた」(笠原)

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高専キャリアのサポートのもとで取り組んでいる自社内のDXは、将来的には他の中小製造業にも広げ、プラットフォーム化することを見据えている。

最初のステップとして、まずは自社内の生産について細かくデータ化し、適切な経営判断を施す。その次のステップで、他社にもDXの導入を拡げ、経営サポートをしていく構えだ。

「経営って、会社に欠落しているものを直視する以外の何物でもない。その欠落している部分を見える化するのに、DXは最適な方法。目を背けて何もしないのは罪だと思っています」(笠原)

このプロジェクトのゴールに据えているのは、Eコマースの立ち上げだ。

日本の中小製造業は、その分野のスペシャリストとして、汎用品のみならず、それぞれの用途に合ったカスタマイズをするのが得意。これまで客先に対しては特長を対面で説明し、クローズドするのが一般的だった。こうしたアナログの部分も包括し、グローバルに展開していけるようなシステムを構築したいと笠原は意気込む。

「売れる仕組みを提供することで、当社への訴求力や会社間の連携を強め、やがて業界全体の発展へとつなげられる。そう確信しています。

これまで、世界各国の製造現場を見てきましたが、日本のものづくりの裾野と蓄積された技術はずば抜けている。日本人の資質も、ものづくりに適している。これまで蓄積してきた、私たちの財産を手放すデメリットは計り知れないですよね。製造業は雇用の面から見ても裾野はかなり広いですし、社会的意義がとてつもなく大きい業界です。

だから私は、その会社に“生き残る意志”がある限り、サポートしていきたいんです」(笠原)

ボーダレスな時代に活躍できるのは、高専卒業生


日本が誇れるはずのものづくりの未来において、高専卒業生は大切な存在だと言い切る笠原。その根拠は、彼自身が頭の中に描く“未来”にある。

「製造の現場では、今後、ソフトとハードの境目がなくなります。実際、これまでのビジネスツールの移り変わり1つ見てみても、ポケベルからオフィスコンピュータ、パソコンとなり、そして現在ではソフトとハードが融合するスマートフォンが主流となっていますよね。

こうした流れに伴って、人の役割も変化すると睨んでいます。具体的には、技術とマネジメントの境界線がなくなるんじゃないかと。

未来はきっと、ボーダレスな世界になる。新時代に突入した時、最も活躍できるのは、実は高専卒業生のような人達だと思っているんです」(笠原)

笠原の考えを受け、高専キャリア・菅野はこのように話す。

「私は、現役高専生に対して『微分積分より難しい仕事はない』という話をよくしているんですが、そのくらいに彼らはポテンシャルが高いんです。なぜなら、工学を学びながら実践を重ね、論理的思考能力を高める教育を日々受けているから。

しかし、とりわけ製造業においては、高専卒は『大卒より人件費が安いが優秀なエンジニア』『即戦力のある作業者』と見られがち。このような固定観念が彼らの可能性を狭めてしまっています。

ですが、サンケイエンジニアリングのような先鋭的な考えを持つメーカーならば、彼らもきっと伸び伸びと、そしてワクワクするような仕事に巡り合えるはず。近い将来、人材をどんどんつなげられたらいいなと考えています」(菅野)

今後は、高専卒業生にとって魅力的に映るような職場を目指していきたいと話す笠原。ハードの魅力を訴求するだけでなく、技術センターのさらなるFAやIoT化など最新技術の導入も積極的に進めている。

かつての栄光、過去の経験に捉われることが多い日本の製造業。サンケイエンジニアリング、そして高専生は、未来に一石を投じることができるのか。今後の動向に注目していきたい。

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