日本でも、モスバーガーやドトールが植物由来の肉を使用したメニューの提供をスタートしたが、実際に食したことのある人はまだ少数派ではないだろうか。
イケア・ジャパン代表取締役社長 兼 チーフサステナビリティオフィサーのヘレン・フォン・ライスは、「日本ではまだ馴染みの薄い存在だからこそ、私たちが植物由来の商品、“プラントボール”の販売に注力する意味がある」と語る。
同社が、10月からエンドウ豆をメインの原材料としたプラントプラントボールを販売するまでに至った経緯と、日本における商機を聞いた。
国内に9店舗あるイケアのレストランには、年間で約1300万の人が訪れているという。これは、東京ディズニーランドのレストランの年間来客数に匹敵する数字だ。
ここで多くの人がオーダーするのが、イケアの看板メニューであり、スウェーデンの代表的な家庭料理、リンゴベリージャムを添えて提供されるミートボールだ。10月からは、このミートボールに、植物由来のプラントボールという選択肢が加わった。
今年、「使い捨てプラスチックの使用・販売廃止」という目標を達成した同社が次に掲げる目標は、2030年までに同社の温室効果ガス削減量が、排出量を上回ることだ。プラントボールの発売は、その大きな目標を達成する上での一つの施策でもある。
「販売はスタートしたばかりではありますが、プラントボールは早い段階で、日本の消費者にも浸透する自信があります。その理由のひとつが、手頃な価格です」
ライスがこう述べるように、イケアのレストランで提供される8個入りのプラントボールは、従来のミートボールよりも100円安く499円で販売される。また、現在世界中のイケアで年間10億個販売されているミートボールの製造過程で発生される温室効果ガスの約4%しか、プラントボールの製造過程では発生しないという。
今年6月、原宿駅前にオープンした「IKEA原宿」と、冬に渋谷のフォーエバー21跡地に完成する「IKEA渋谷」では、プラントボールに限らず、レストランで提供するメニューの50%は、植物由来のものになる予定だ。
イケアが日本での植物由来の食品にここまで注力するのは、グローバル企業としての責任でもある。
「牛が発する二酸化炭素、都市部への運送の際に発生する二酸化炭素など、牛肉を選択することは、気候変動に直接繋がっています。欧米諸国では、人々の健康面だけではなく、環境への影響も踏まえ、代替肉としての植物肉が浸透してきました。こうした変化から逆行している国が、中国と日本です。お肉が大好きな両国のみ、年々牛肉の消費量が上昇しています。すぐに牛肉の消費を減少させることは難しいでしょう。しかし、植物由来の肉もあるという選択肢を企業として提示すべきだと思っています」