現代アートを楽しむことがなぜビジネスにも有用なのか?
現代アートとは、このように鑑賞者の思考を促すものである。もう賢明な読者は現代アートの効用に気づいているかもしれない。
現代アートの価値はオンリーワンであることであり、それは付加価値を創造するコンテクストを重視するのだと述べた。鑑賞者はアーティストたちの作品からこのコンテクストが一体何なのかを思考し、読み取り、自分なりの答えを導き出す。
現代アートは思考するべく鑑賞者に問題を提供してくれている。つまり、アーティストは解くべき問題の創造者なのだ。
ビジネスにおいても同様のことが言える。大切なのは、オンリーワンの「問い」をいかに立てることができるか、そしてその解決策をいかに提示できるかということに他ならない。
前回のコラムでも述べたが、ビジネスにおけるブルーオーシャンの開拓は、市場や世の中の出来事から「問題を探す」ことから始まる。何が潜在的な問題かを見つけ、誰も見つけていない問題の解決を提示すること、オンリーワンの付加価値を創造することが成功につながる。
受験と同じで、問題を数多く解いた者は、問題づくりのコツをつかむことができる。そのエキスパートに近づいていく。
現代アートは、解くべき問題の宝庫である。それを解くことが、混沌の中から問題を導き出すスキルを強化することになるのだ。そう考えれば、現代アートのトップアーティストの作品集は、最高の問題集だと言える。
さあ、ここまで読んで「問題を解いてみたい」と思ったあなた。いきなり難問に挑戦してもいいのだが、先のバンクシーの作品はとても良質でわかりやすい問題から入れるのでオススメだ。グラフィティ、つまりストリートで活動する彼は、アートに興味がない一般の人にも訴求する前提で描いているからだ。ストリートといえば、バスキアやキース・ヘリング、今なら、旬のカウズもいいだろう。
メルボルンのビクトリア国立美術館で開催されたカウズ(KAWS)の個展(Getty Images)
いやいや、もっと難問を、というのなら、ゲルハルト・リヒターという現役最高峰レベルのアーティストの作品も、本当に楽しい謎解きができるだろう。
子供と一緒に楽しみたいのなら、オラファー・エリアソンはどうだろう。彼の作品を読み解いて、実際に作品を体験されるといいと思う。
連載:「グッドビジネスは魅力的なアートか?」 ~現代アートとブランドビジネスの相関性
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