褒められないほうがいいです、私は。永久メイは高みを目指し続ける #30UNDER30

Giselle by Natasha Razina (C) State Academic Mariinsky Theater


──ずっと本番だったらいいのに?
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いえ、それはないですね。本番は本当に緊張しますから。でも、マリインスキーの舞台って、やっぱり何かがある。不思議な力というか。そこに立っちゃうと痛みも全部忘れるし、練習のときは体力的にすごくしんどかったところでも、本番になると急に変な力が湧いてきて踊れたり。舞台も、舞台のセットも、すべてが自分を助けてくれるんです。

──舞台で踊り続けるために、怪我をしないよう気をつけていることとか、ケアしていることはありますか?

あります。バレエ学校時代から、私は何度か怪我していて。ひどい骨折などはないんですけど、知らない間に疲労骨折をしていたこともありました。いつも痛みを感じるのは、本番の後なんです。
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Photograph by Emi

──本番ではアドレナリンが出るからかもしれないですね。

そうなんです、それが多いんですよ。レッスンのリハーサルだと、ちょっと痛くても、「いいや、大丈夫」って思っちゃうんです。本番までに自分を追い込んで、気づかないうちにすごく痛くなっていた、とか。そんな風に自分を追い込みすぎちゃうと、このあとどうなるか分からないし、もっと大きな怪我に繋がるかもしれない。だから、そこは本当に気をつけています。

痛みはバレエにつきものなんですけど、やっぱり「痛い」って、身体が何かを伝えているものなので……。自分のテクニックが違うとか、本当はやらないといけないことをやっていないということもあると思っています。

今は自分の調整をしないといけないと分かりますが、以前は休んだらすごく悔しかったんです。1年目、2年目は月曜のお休みでも毎日レッスンに行っていました。でも、休めるときに休んでおいたほうが、次の1週間はもっといいクオリティで踊れるのに気づいたんですね。休むって大切なんだな、と。

──今回はコロナのせいで意図せず日本へ帰ったわけですが、いい休みになりましたか。

すごくリラックスできました。この期間中、もしロシアに一人でいたら辛かったと思います。本当に家族が支えになりました。母や妹からも、ロシアにいる時と日本にいる時とは違うし、日本にいてもバレエをしている時と家にいるときは表情や性格が変わるよね、とよく言われます。

ロシアにいるとバレエのことで頭がいっぱいで、自分の部屋にいてもリラックスしていません。でも、今はバレエ第一の生活だから、踊ること以外はそんなに興味がないというか。頭の中のスイッチが入るのが自分でも分かります。

──異国の地で、孤独や寂しさを感じることは?

それはあるんですけどね。でも、そんなこと言っていられない。バレエをしにロシアまで来ているんだから、中途半端な気持ちではいかない、というか。バレエで忙しくなってくると、そういう寂しさも忘れるぐらいになるので、それぐらい熱中できることがあって良かったな、と思います。逆に、怪我をしたときなどには、かえって「はぁ……」って、ズッシリ来ますね。
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文・構成=神吉 弘邦(Hirokuni Kanki)

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