米国のスタートアップ界隈で、新たな成長ジャンルとして注目なのが「ローカルサービス」。「アマゾン・ローカル」は地域を指定して、レストラン予約や宅配注文が可能。名門ベンチャーキャピタルのY Combinatorもクリーニングの受け取りなどの雑務をアプリで依頼できるExecや、庭のケアの代行に特化したLAWN LOVEといった企業に出資を行っている。
そんな中、昨年グーグルから1億ドルの資金調達に成功した企業がThumbtack。同社の強みは家事代行に限らず様々な分野の専門家を派遣できる点。まるで“アマゾンで本を買うかのような感覚”で、結婚式のDJやカメラマン、ジムのトレーナーやピアノ教師といった、その道のプロに仕事を依頼できる。設立6年になる同社は全米に拠点を持ち、この分野の成長株として知られている。
ところが、Thumbtack の出資元であるグーグルがここに来て、自らローカルサービスの分野に進出。同社と競合関係になりそうな雲行きなのだ。
情報筋がフォーブスに明かしたところによれば「グーグルは自社の広告チームを使い、顧客に屋根職人などを紹介するサービスを開始。Thumbtackだけでなく、アマゾンとも競合するビジネスに進出する」という。
Thumbtackのマルコ・ザッパコスタCEOは昨年8月、「我々は将来の競合になる企業に出資は行わないというグーグルキャピタルの言葉を信じている」と語ったが、その信頼は裏切られる形になりそうだ。フォーブスの取材に対し、グーグルキャピタルの広報はコメントを控えている。
グーグルは他にもこの分野でSurveyMonkeyやGlassdoo、Zenpayrollといった企業に出資。4月上旬にはZenpayrollに対し6千万ドルの出資を公表している。
バズフィードのレポートによると、グーグルは「アドワーズとの統合により、ユーザーが特定地域のサービスを検索したり、見積もりを直接受け取れるビジネスを推進している」とのこと。
グーグルの出資が利益相反の結果を生む事態はこれが初めてではない。グーグルは2013年8月にウーバー社へ2.58億ドルを出資。グーグルの最高法務責任者のディビッド・ドラモンド氏がウーバーの役員に名を連ねている。しかしその一方、グーグルは独自の配車サービス事業を推進中だ。
グーグルのエリック・シュミット会長はアマゾンについて昨年10月、「将来の検索の分野での最大のライバルになる」と述べた。ローカルサービスの分野でも着々と地盤を築きつつあるアマゾンを横目に、この市場への参入を急いでいるという見方も出来そうだ。
ローカルサービス市場は年間4000億ドル(約47兆円)規模ともいわれる。今後、この分野の競争はさらに激化していきそうだ。