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Flashpop/Getty Images

ファンドマネージャーとして巨額の資金を運用してきた異色の経歴を持つ作家、波多野聖。彼が書き下ろす歴史経済サスペンス小説『バタフライ・ドクトリン』から、「いま」という時代を読み解くシリーズの2回目をお届けする。

今回は、尋常ではない魅力で人々を強力に惹きつける「カリスマ」について、その正体を解き明かしていく。


どの時代にも、多くの人を惹きつけて離さない、不思議な魅力を持つ人物が存在する。いわゆる「カリスマ」だ。

小説「バタフライ・ドクトリン」にも、途轍もないカリスマ性を持った人物が登場する。「哀駘它(あいたいだ)」だ。5章4話「愛という迷宮」の次の部分に注目してほしい。

“何故、哀駘它はこれだけ人を惹きつける。そこには魅力、つまり"力"があるということだ。それをどう考えればいいのだ?”
“哀駘它は何も見ていない。見ようとも、考えようともしていない。ただ、自分の前に現れたものを受け入れるだけ。何もないのだ”

哀駘它とは、荘子にも出てくる人物で、下膨れの大きな顔に不細工な姿形という醜い外見の男のこと。金をもっているわけでも、気の利いた会話ができるわけでもない。成し遂げたいことや、好き嫌いすらない。ないないづくしの「なにもない」人物だ。

それにもかかわらず、周囲の人々を強力に惹きつけ、老若男女問わずに「春をなす」かように不思議なカリスマ性を持つ。

「なにもない」人間に、なぜ多くの人が惹きつけられてしまうのか。

「欲」で「欲」を惹きつけるカリスマ


哀駘它について考える前に、我々が生きている現代における「カリスマ」と言われる人物について考えてみよう。

周囲を惹きつける力、つまりカリスマ性を持つ者には、何か特別な「エネルギー」のようなものを感じることが多い。

前回の記事で、人間の意思や意識が(量子の世界に影響を与えて)コンピューターを狂わせる可能性があると話したが、このカリスマの体からも、何かしらの物質(オーラとされる)が醸し出されていて、それが周りの人間に作用しているとも大いに考えられる。一瞬で人々の心を奪うカリスマ性のエネルギーは、そうとしか説明がつかないからだ。

では、そのエネルギーの正体とは何なのか。1つには、それは「欲」ではないかと私は考えている。

「渇望感」や「欠乏感」と言い換えることもできるだろう。金銭的に成功しようとしている人は、間違いなく欲があるし、瞬発的に飛躍しようとしたときには絶対に必要なものだと思う。

しかし、この欲を裏返してみると、「空っぽな自分」という現実が浮かび上がってくる。「まだ足りない」「まだまだ入れたい」「もっと欲しい」「もっともっと」──とその人の中の欲が周りの人間の欲に呼応して、強力に引き寄せるのだ。現状に満足できないことから、世間に認められない「苛立ち」や「怒り」を持つこともある。

構成=松崎美和子、大竹初奈

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