ビジネス

2020.10.28

「ピュアな思いを諦めない」 ZOZO傘下yutori片石貴展の主張 #30UNDER30

yutori代表 片石貴展


「臆病な秀才が、人生を変える瞬間を目の当たりにしました。yutoriのメンバーもそうです。もともとは普通の学生や会社員。でも才能があって、ファッションが好き、だけど自信をもてない。

そういう人に『〇〇のこういうところって、めちゃくちゃ面白いよね』と伝えて、活躍の機会を提供してきました。すると自分の才能に気づいて、自分のことを好きになっていった。yutoriでのいままでの取り組みを通じて、僕らの考えがより広まれば、世の中の幸せが増える確信ができた。だから僕らは上場を目指し、会社としてスケールしていきたい」

着る人の思想を代弁する洋服


「『臆病な秀才の最初のきっかけを、創り続ける』ことは、弱者の生存戦略でもあるんです。才能の片鱗がある人、好きなことを深掘りしている人と一緒に仕事をすることで、流行に擦り減らされない独自の商品ができて、お金も残し続けられる。yutoriはまだまだ、未熟な若者がやっている小さい企業。自分たちのスタイルでビジネスをするために、そして会社を長く繁栄させ続けるため、これが時代的に正しいやり方じゃないかなって」

現在の不安定な社会情勢は、ファッション業界を類の見ない苦境に陥らせている。だがyutoriは2020年10月、オリジナルブランド「9090(ナインティナインティ)」で過去最高の売上を記録。ミレニアル世代を中心とした若者はyutoriの服を強く希求し続けているのだ。

なぜ、yutoriの服は若者を熱狂させるのか。片石が考える理由は大きく二つある。

ひとつは、マーケティングで一般的な「ペルソナ設定(架空の顧客のプロフィール、価値観等を詳細に想定すること)」をしないから。

「ターゲットのプロフィールなどを“19歳の女性”などの言葉で定義しません。絶対に、理解が抽象的になるからです。具体的に考えるために、ぼくらはターゲットのインスタグラムを共有します。

自分の顔写真をあげているのか、洋服なのか、シーシャでくつろいでいる姿なのか。顔写真でも、盛れるカメラで可愛く写した自撮りなのか、友達に不意に取られた自然な他撮りなのかによっても、写真をあげる心理が全く違う。僕らは写真の表面をみず、その奥にある心理を知ることを重視しています」

もうひとつは、yutoriの服は外面を着飾る以上の価値を秘めているからだ。たとえば『9090』で人気のスウィングトップ。

胸部にはタピオカを飲む女の子のイラストをオン、背面には「I don’t wanna be clone(量産型になりたくない)」というメッセージがプリントされている。この服はある意味、タピオカという流行りものに対してポップに中指を立てている。



「古着好きな子はナイーブであることも多い。メジャーな流行に抗いたいけど、声を大にして主張できないことがある。この服は、そういう子の主張を代弁しているんです」
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文=田中一成 写真=木下智央

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