米国務省、中国のウイグル問題や強制労働について意見を表明

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中国政府は2019年12月、新疆ウイグル自治区のいわゆる「再教育センター」に収容されていた人たちは全員「卒業した」と発表した。

しかし最新の報告書は、中国政府が新たに収容所を建設していることを示唆している。米国務省人身取引監視対策部(Office to Monitor and Combat Trafficking in Persons)の特使ジョン・コットン・リッチモンド(John Cotton Richmond)は10月16日の記者会見で、中国共産党はそうしたセンターに、ウイグル人をはじめとする宗教的少数派100万人以上を強圧的に拘留し、政治的またイデオロギー的に教化したり、多くを工場などで強制的に働かせて搾取したりしていると述べた。中国共産党は、こうした主張を強く否定している。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は2020年9月、衛星画像などの分析内容をまとめた報告書を発表。そのなかで、2019年7月から2020年7月のあいだに、61カ所以上の収容所と疑われる施設で新たに建設工事が行われている様子があることを明らかにした。

最新の衛星画像を見ると、それらの施設のうち最低でも14カ所では、2020年に入ってからも建設工事が続いている様子がわかる。そのほぼ半数は、警備が強化された施設だ。

ASPIはそれを踏まえ、収容所は、警備のさほど厳しくない「再教育センター」ではなく、警備を厳重にした刑務所のような施設として使用される方向に向かっているのではないかという考えを示した。

この最新データが公表されたことで、新しい収容所と疑われる施設が、イスラム教徒のウイグル人を拘留するために使われるのではないかという懸念が新たに生まれている。彼らは、中国で迫害されている宗教的な少数派だ。

中国では、推定100万人(あるいはそれ以上)に上るイスラム系ウイグル人が、いわゆる「再教育センター」に収容されたと見られている。再教育センターは、収容者から宗教的・民族的なアイデンティティや伝統を奪い、それに代わって国家への絶対的忠誠を植えつけるための施設だ。

こうした主張やその他の訴えは、イスラム系ウイグル人が人身売買や強制労働、強制不妊手術、強制中絶の被害に遭っていることを示唆しているが、独立した調査はまだ行われていない。

現時点では、中国で行われているとされる残虐行為を捜査できる国際的な裁判所はない。国際刑事裁判所(ICC)の法的権限を拡大して、イスラム系ウイグル人への残虐な迫害疑惑について捜査を行うよう求める動きはあるものの、ICCがこの件に関して権限を有していると判断するかどうかはまだ定かではない。

中国が宗教的少数派の大量強制収容をさらに進めるべく準備をしている可能性があることから、他国ならびに国際機関は、この疑惑をめぐって相応の捜査が行われ、犯罪行為がある場合には解決されるよう努めるべきだ。

米国務省は2020年7月、他の連邦政府3機関と共同で米企業に対して勧告を出し、各社のサプライチェーンに、強制労働などの人権侵害に加担している中国各地の企業や組織などが組み込まれているおそれがあると指摘した。

さらに中国製品に関する違反商品保留命令(米税関・国境取締局が対象製品を押収する措置)も、いくつか発出された。これは、強制労働によって製造された製品が米国に輸入されることを防ぐためだ。

国務次官補(民主主義・人権・労働問題担当)のロバート・デストロは10月16日、次のように強調した。「強制労働など、ビジネスに関連した人権侵害を阻止するために、われわれ全員に果たすべき役割がある」

「各社は、契約を締結する前に、サプライチェーンとビジネスパートナーについて、人権に関するデューデリジェンスを行うべきだ」

「消費者は、衣類や家電、食品を購入したお金が、人権を侵害する組織の手に渡らないよう懸念していることをはっきり主張すべきだ。そして政府は、各社と協力して、強制労働によって製造された製品の輸入を禁止しなくてはならない」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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