独裁者アドルフ・ヒトラー / Getty Images

ナチス・ドイツを率いた独裁者アドルフ・ヒトラーの手書きのスピーチ原稿が10月23日、ドイツのオークションで落札された。現地では新型コロナウイルスのロックダウンに反発する一部の団体が、反ユダヤ主義やネオナチの主張を掲げる動きが発生しており、このオークションが彼らの動きを後押しするとの懸念の声もあがっていた。

ミュンヘンのオークションハウス「ヘルマン・ヒストリカ」の取締役のBernhard Pacherは、この原稿が歴史的に重要なものであり、博物館に保存されるべきだとAP通信に語った。

Pacherによると、原稿はすべて第二次世界大戦前のもので、ナチス党の組織や貢献者に向けられたもので、戦争への準備やユダヤ人問題について言及しているという。

仮にこれらの原稿が破壊され歴史家たちに渡されなければ、ナチ・アポロジストと呼ばれる右翼勢力は、「ヒトラーはこれらのことを言っていないと主張し、独自の解釈をすることになる」とPacherは述べた。彼によると、この原稿はヒトラーがドイツ国民を戦争に向かわせたことを明確に示しているという。

原稿は、匿名の入札者によって落札され、第二次世界大戦が始まる8ヶ月前の1939年にベルリンで行われた軍の将校への演説の概要の落札価格は4万300ドルだったという。

ブリュッセルに本拠を置く欧州ユダヤ人協会の会長のRabbi Menachem Margolinは声明で、このオークションを無責任で無神経なものと呼び、「ヒトラー愛好家らを正当化することにつながる」と述べた。

Pacherは彼らが運営するオークションが、ナチ時代のアイテムをいかなるネオナチ集団にも販売していないと述べ、それらの品々を購入するのは多くの場合、博物館や研究者たちだと話した。

反ユダヤ主義を監視する団体によると、ここ最近のロックダウンへの抗議デモでは、反ユダヤ主義的な表現が目立つという。ドイツの情報機関「BfV」のプレジデントのThomas Haldenwangによると、そのような傾向は特に右翼の過激派の抗議行動で見られるという。

ドイツ政府の年次報告書によると、昨年ドイツ国内で発生したユダヤ人やユダヤ人関連施設への攻撃の件数は2000件に達し、2018年から13%の増加となっていた。

昨年、レバノンの慈善活動家のAbdallah Chatilaは、ヘルマン・ヒストリカ社からヒトラーのシルクハットと「我が闘争」のシルバープレート版を購入した。ChatilaはドイツメディアDeutsche Welleの取材に、これらの品物をイスラエルの団体に寄付したと語っていた。

編集=上田裕資

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