SNSバブル時代の成功法。noteの世界観を作る深津貴之の解 #30UNDER30

インタラクションデザイナー 深津貴之

誰もが発信力を身につけた今、インターネット、SNSには情報で溢れ返っている。

「重要なニュース」と言っても、人それぞれの価値観や嗜好によって、その価値は変化する。そんな世界に先駆けて、いち早くデザインやテクノロジーについて発信し、注目されてきた人物がいる。クリエイティブファーム「THE GUILD」代表、メディアプラットフォーム「note」のCXOとして、noteのサービス設計から世界観を創作するインタラクションデザイナーの深津貴之だ。

今回、ビジネスやアートなど、各分野において次世代を担う30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30 JAPAN」のアドバイザーの一人として、編集部とともに受賞者を審査した。

ツイッターのフォロワーは10万6000人以上。SNS界のオピニオンリーダーでもある深津は、Under30世代をどう捉え、どのようなメッセージを伝えたいのだろうか──。

30 UNDER 30 JAPAN 2020

留学中に始めたブログ。「棲み分けられた」ネット空間だった


「今の若者って、わからないんですよ」

深津が注目をする20代以下の共通点を聞くと、こんな答えが返ってきた。自身が留学中にブログで発信を始めた2000年代初期と比べて、インターネット上の環境が大きく変化していることは言うまでもない。

かつてのネット空間を「みんな素っ裸になって走り回っていた砂漠のような場所」と深津は表現する。まだ利用している人も少なかった。お互いに距離感をとり、棲み分けられた空間だったと振り返る。

それが今は、「まるで渋谷の交差点のように混んでいる」という。利用する人が増えてくるにつれ、現実社会のように様々なルールが定められ、ネットはもはや日常の延長線に存在する。誰もが「拡声器を持って喋っている状態」であり、そこで匿名だとしても誰かに罵声を浴びせれば、相手を傷つけることになる。

SNS上で発信する人が増えたことで、若い才能がネットから発掘されるための競争は激化し、現状を、深津はこう分析する。

「頭一個抜きん出るのが難しい状況になりました。インフルエンサーといっても、現実社会で実績のある人と、とやかく文句をつけ炎上する人と二極化しています。そして、悪目立ちする人も注目されやすい状況にあります」

約20年前。深津がイギリスに留学中の学生だった頃、ネット上で海外の情報を日本に向けて発信している人は少なかった。多い日は1日3本、デザインやテクノロジーについてブログを更新し続けたところ、その価値を見極めてくれた当時の業界のリーダーたちと交流することができた。

「ガキンチョだったけど、業界の人が注目してくれてラッキーでした。まだ誰もやっていないうちに、直通パスを投げられた感じです」

今でもその縁は続いており、ともに仕事をする業界のトップが20年前から深津のブログを読んでいたなんてことがあるという。
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文=田中舞子 構成=督あかり 写真=小田駿一

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