Qrion、iPhoneで曲作りを始めて世界最大級のフェスへ #30UNDER30

DJ/プロデューサー Qrion


── サンフランシスコを拠点に選んだのはなぜでしょう。
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2015年にサンフランシスコのイベントに呼んでもらって、とてもいいライブができたんです。同じ年の後半にはアメリカの他の都市をめぐるツアーもやりましたが、アメリカで活動するなら、はじめてライブをしたサンフランシスコしかない、と思い込んでいました(笑)。サンフランシスコの穏やかな雰囲気は好きだし、後悔はしていません。



──拠点を移して変わったことはありますか。
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サンフランシスコならではだと思いますが、友人のほとんどはSlackやDiscord、フェイスブックやグーグルといったテック企業につとめています。普段から彼らの仕事の話を聞くので「Discordのこの機能を使えば、もっとファンに音楽を届けられるかも」といった発想が生まれるようになりましたね。彼らは音楽も好きでもあるので、よく音楽の情報交換をしています。

日本にいるときは全然わからなかった政治や社会問題についても考えるようなりました。こちらでは政治について話すことは、日常なんです。私も影響を受けて、自分の意見を持つようになりました。

──アメリカではアジア人として差別されることもあるのではないでしょうか。

そうですね。友人には差別主義者はいませんが、空港などに行くとあからさまに差別をしてくる人もいます。列に横入りしてきたり、私の英語発音についてバカにしてきたり……。もちろん私だけではありません。なにもしていない黒人の友人が、街を警備している警察に催涙スプレーを浴びせられたこともありました。自分でできることはやっていこうと、楽曲の売上を通じてBlack Lives Matter運動へ募金をしたりもしています。

もうひとつ変わったのは、メンタルヘルスについての考えです。もともとは部屋でこもって一人で音楽をつくるのが好きな性格だったのに、突然たくさんの人の前に立つことが増えました。正直、戸惑いは大きかった。まわりのDJに話を聞くと、多くの人がセラピーに通ったり、メンタルヘルスについて気を使っていることがわかりました。



アメリカでは、セラピーや精神科に通うのはごく普通のこと。私も週に一回、日本人のセラピストのもとに通い、自分と向き合う時間をつくっています。音楽家は自分の感情を扱う仕事です。自分の感情や心と向き合うことは、音楽家としてキャリアを積んでいくうえで、必要不可欠だと思っています。
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文=葛原信太郎 編集=石原龍太郎

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