まず、金正恩氏はグレーのスーツ姿だった。これは、祖父、金日成主席が好んで着用した色合いのものだ。正恩氏は、カリスマ的な人気を誇った祖父のアバターになることを狙い、体形や服装などを似せてきた。今回も、市民たちが金日成を思い起こすよう、この服装を選んだと想像するのは難くない。
問題は残る2人だ。2人とも10月5日に行われた党中央委員会政治局会議で、「元帥」の軍事称号を与えられた。軍が強い力を持つ北朝鮮では、政治的功績があった者には、例え文民であっても「軍事称号」が与えられる。北朝鮮の生存者で現在、元帥の軍事称号を持つのは、この2人以外は金正恩氏と玄哲海第1人民武力(国防)次官しかいない。
まず、朴正天氏は暗緑色の軍礼服姿。金のモールが入った赤いスタンドカラーで、胸いっぱいにきらびやかな勲章を着けていた。両サイドに金ボタンをあしらったこの服装は、ノモンハン事件でソ連軍司令官を務め、名将とうたわれたジューコフ元帥ら旧ソ連軍人が着用したものに酷似していた。パレード開始前、一列に並んで正恩氏に謁見した他の北朝鮮軍の将軍たちも同じスタイルの軍服を着用していた。
次に、李炳哲氏。こちらは唯一、白い軍服に金ボタン姿で、白い襟には赤い飾りがついていた。これは、スターリンが着用していた白い軍服姿にうり二つだった。北朝鮮の幹部は2012年4月の金日成生誕100周年の際の軍事パレードでも、白い軍服をまとっていたが、これは軍帽の形から、1950年代に朝鮮戦争の戦勝記念パレードで金日成主席がまとった軍服をまねたものだと言われていた。今回は軍帽が異なり、やはり金日成モデルというよりもスターリンモデルといえるものだった。こうしてみると、まるで金日成がスターリンとジューコフを招待して、一緒に閲兵しているかのようだった。